部活中ではあるものの、桃井はパーカーのポケットに携帯を忍ばせている。
それは監督や主将、他の部員からの連絡にすぐに反応するためである。
情報収集能力に長けている桃井は、常日頃からの連絡や情報に対しても機敏だった。
無論、部活の最中は携帯はマナーモードに設定はしてあるが。



そういえば…と桃井は先程ポケットの中で携帯が震えてしたのを思い出す。
監督と打ち合わせしていた最中だったのですぐに携帯を取り出すわけにもいかなかったが、短い時間しかバイブレーターが作動していなかったのでどうやらメールのようだ。

話が終わったところで桃井はポケットに入れていた携帯を探る。
彼女の髪と同じ淡い桃色の携帯を開くと、確かに受信メールがあった。
宛先は、彼女が想いを寄せる黒子から。

そのメールを開き、内容を一読したところで思わず、え……?、と短く言葉が零れた。
慌てて視線をコートへ戻し、幼なじみである青峰の姿を探す。


ウインターカップで誠凜に負けて以来、練習に参加してくれるようになった幼なじみは、他の部員達よりも圧倒的な存在感故にすぐに分かった。

「大ちゃん!」

青峰は桃井の声に気だるげに返事をしながら振り向いた。
桃井が青峰を叱咤する光景は毎度のことである…が、どうしたのだろうかと近くにいた桜井は動きを止めた。
先程まで青峰は真面目に練習していた方であり、桃井が注意するようなことは何もなかった…それに桃井の表情は怒っているというよりも焦っていると表現した方が正しい。

「これ…!テツくんが…っ!」

「何だよ…テツがどうしたって?」

桃井から携帯を受け取った青峰は、ひとまず携帯の画面を見た。
褐色の肌の青峰の手に、桜のような桃色の携帯は不釣り合いではあった。

しかしすぐに青峰の表情が一変する。

「テツ…!あいつ…っ」

かつての相棒の名前を呼んで、青峰は桃井に携帯を押し返した。
そして青峰は練習どころか体育館すら飛び出して行く。

「おい、青峰!てめぇ練習は……」

「すみません、若松さんっ!」

次の主将となった若松が怒鳴る頃には青峰の姿はもう消えていた。
すかさず桃井がやってきて謝罪する。

「だけどすぐにテツくんのとこにいかなきゃいけないんです!だって…」

桃井が放った次の言葉でようやく青峰が飛び出して行った理由が分かった。

「テツくん…あと少ししか生きていられないんです…!」



120812



title:秋桜-コスモス-


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