洛山高校二年生となり、夏のインターハイが始まろうとしていた。
特に危なげもなく洛山はインターハイ出場を決めた。
昨年の優勝校でもあり、この僕がいる限り負けるはずはないのだけれど。



開会式が行われ、早くも初戦が行われようとしている。
僕はその間、東京のとある場所を訪れていた。

テツヤが眠る、墓標へと―――。



如何なる勝負にも勝者の立場であった僕が初めて敗北を味わったのは、ウインターカップの決勝戦、テツヤの所属する誠凛との試合だった。
君の才能を見出したのは僕なのに、僕の読みを君は上回って見せたよね。
だが、僕を初めて敗者に陥れたテツヤは、僕に再戦の機会を与える時間もなく逝ってしまった。

最期にテツヤに会ったとき、君が無理をしているのは視えていた。
けれど僕が止めてもテツヤは聞かなかっただろうね…君の目は、ウインターカップ決勝戦で僕を倒すと言い出した、あのときに似ていたから。
それでも僕は止めるべきだったのだろうか、という葛藤もあったけれど。
何より僕が望むのは、テツヤの願いだから…僕の行動は正解だったんだろう。




花を買って来たから、ここに手向けておくよ。
本当ならば故人の好きな花を用意するのが良いらしいが、生憎僕はテツヤの好きな花なんて知らないし、大方君も花に興味はなかっただろう?
だからテツヤの誕生花を用意したよ。

そういえば知っているかい?
誕生花というのは多くの例があるが、テツヤの誕生花には黄色のサフランがあって、花言葉は青春の喜びというそうだ。
バスケばかりの日々だった僕達にはぴったりだと思わないかい?



今日からインターハイが始まるよ。
僕がテツヤに会いに来たのは優勝を宣言する為さ。
僕はもう去年とは違うから、君が嫌う勝ち方は使わないよ。
眺めているといいよ…涼太も真太郎も大輝も敦も、みんな君がまだ帝光中バスケ部にいたあの頃に戻ったようだからね。



それじゃあ、またね―――。



120921



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