「あーっ!赤司っち達が黒子っち泣かしてる!」

「というか何でここにいるのだよ!?」

バタバタと複数の足音が聞こえたと思ったら、賑やかとも騒がしいとも取れる声がした。
そこにいたのは黄瀬くんや緑間くんで。

「昨日帰ってきたんだよ」

「みんな久しぶりー」

「てか何でテツ泣いてんだよ!?」

「テツくん大丈夫っ!?」

黄瀬くん達の後ろから青峰くんや桃井さんが顔を出して、彼らを押し退けてボクの隣へやって来た。

「大丈夫、です……すみま、せ…っ」

「おい赤司!てめぇ何テツ泣かせてるんだよっ!」

「少しテツを叱っただけだよ」

「ハァ!?」

「ボクが、悪かったんです…から……」

目元に残る涙を脱ぐって、無理矢理笑顔を張り付ける。
心配そうな表情の青峰くんと桃井さんを安心させようとしたんだけど、二人の顔は変わらなくて。

「…てめぇ一人で苦しむなよ、テツ」

「そうだよテツくん。私達、いつだってテツくんのこと考えてるんだからね!」

二人の言葉に、抑えたはずの涙が再び込み上げてきて。
ようやく引いたと思ってたのに、どうしてこの人達はこんなにも…。

「青峰っち達ずるいっス!オレだって黒子っちのこと大好きっスよ!」

「分かってるよ?きーちゃんもミドリンもみんなテツくんのこと大好きだって」

「なっ…!勝手なことを言うな桃井!」

「じゃあ何で来たんだよお前」

「っ!たまたま外に出たときに黄瀬と会っただけなのだよ!」

「ミドチンと黄瀬ちんは方向逆じゃなかったっけー?」

「相変わらず素直じゃないね、真太郎は」

いつの間にか自然と笑っていて。
懐かしい感覚だった…帝光中にいた、まだみんなが変わっていく前の穏やかな日常を思い出す。
今みたいにくだらない話で笑っていた、楽しかったあの頃を。


みんなと出会えて良かった、と心からそう思った。
だから、ボクは―――。



「…お願いがあります」

ようやく和解できた君達と、まだ離れたくないなんて…今更こんなことを願うとは、思ってもみなかったけれど。

「いずれ死ぬボクがこんなことを願うなんて烏滸(おこ)がましいことだと思います。だけど………!」

ボクはまだ、あの中学時代みたいにみんなと過ごしたいんです……。
だから少しだけ、みんなの時間をもらっていいですか?



120827


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