その後、黄瀬くんを宥めるのは大変だった。
桃井さんと同じような質問を黄瀬くんからされ、桃井さんに答えた内容と同じものを繰り返す。
青峰くんからは軽く叱られた。

話を終えて、部活途中に抜け出したという黄瀬くん達をどうにか説得して学校へ戻させる。
桃井さんはともかく、黄瀬くんがあんなに早く気付くとは思わなかった。
だけど帝光中のときのことを思い出せば…それは容易に想像できたかもしれない。

黄瀬くん達の相手をしていて気付かなかったけれど、空はもう日が暮れていて、ボクがここへ来たときよりも随分時間が経っていた。
公園で長い休憩をしてしまったから、そろそろ家に戻らないと…。
座ったままだった足を動かして、再び帰路を歩く。

……黄瀬くんが抱き付いてきたせいかな、肩が痛いのは。



「黒子!」

家まで近付いたところで、緑間くんの声がした。

振り向くと、鮮やかな緑色が視界に入る。

「緑間くん…」

時間帯から考えると、緑間くんは部活を終えてから来たんだろう。
真面目な彼のことだから、部活中は携帯はロッカーにいれているだろうし。

「黒子…!あれは何の冗談だ」

「…先程メールした内容のことですか?」

「それ以外無いだろう…!」

「そのままの意味ですよ」

未だ信じられない、というような表情だった。
ボクがあまりにも普通通りだから、信じられないのかもしれない。

何でそんなに平然としてるのか…それは黄瀬くんに聞かれた質問だった。
だって長く生きられないというのは中学三年生のときに言われていたし、誠凛に入ってもずっとバスケをしていればどうなるか…誰にでも分かることで。
…それを言ったら青峰くんに怒られんですけどね。

「みなさんに隠していただけで、本当は昔から長く生きられないと言われていたんです…それが一年バスケをしたら短くなった、それだけですよ」

「そんなこと…」

「緑間くんの言葉を借りるなら…天命なんですよ、これは」

一度言ってみたかったんです…そう笑って言ってみても、緑間くんの表情は曇ったままだった。



120816



title:水葬


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