医師からとうとうバスケをやめるように言われた―――それは、もってあと数日の命のボクへの最後の警告だった。



誠凜バスケ部のみなさんにそのことを言えば、何で今まで言わねえんだよダアホ!とキャプテンの怒声が飛んできた。
だけどその表情は辛そうなもので、いつも前向きなカントクも本当なの……?と泣いていた。
火神くんは嘘だろ!とボクの肩を掴んできた…その手は僅かに震えていた。

「本当のことです…すみません」

謝ることじゃねえだろ、といつもの調子で火神くんは言い返すけれど、その声音すらも弱々しく聞こえた。
震える火神くんの手をボクの肩からそっと離して、カントクへ声をかける。

「明日からお休みをいただいてもいいですか?まだ、彼らには伝えていないので……………」

練習に参加しようにもきっと今のボクには出来ないだろう…医師から警告を受けるほんの少し前から、体の動きが確かに鈍っていた。
カントクは涙ぐみながらも頷いてくれた。



さて…未だにボクのことを伝えていない彼らにはどうしようか。
帝光時代のチームメイト達は今や県をいくつも越えた先にいる者もいる。
本当は直接話さなければいけないけれども、仕方ないので携帯電話のメール作成画面を開いた。



文字を打っていると、改めてボクの命の短さを実感する………ボタンを打つ指が、心無しか普段より遅かった。



120810



title:水葬


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