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私は彼のことが嫌いだ。
クラスの可愛い女の子を泣かせるし、傷つけてばかりなのだ。
普通、女の子が勇気をだしてした告白に「そういうの重いから、無理」とか言わないと思う。せめて、「ごめん、今は色々忙しくて恋愛とか考えれないんだ」の一言があればいいのに。
少し顔がかっこ良くて、スポーツが出来るからって結局は馬鹿な男なのだ。
それなのに、私は何故かこの男に呼び出されて体育館の裏に来ていた。下駄箱の中に入っていた、【放課後体育館の裏に来て下さい】っていう手紙なんか信じなければ良かったのに、と後悔してももう遅い。
私は、目の前にいる男が私の嫌いな男であるとは、手紙から想像できなかったのである。


「オレ、明日誕生日なんだ」
「へぇー、良かったね おめでとう」
「ちょっ、ちょっと!! 待ってよ!!」

逃げようとする私の手を強く掴み、彼はにこりと笑う。痛いんだけど、と言ったら掴んでいた手を少しだけ緩ませた。

「明日、誕生日だから一緒にいて欲しいんっスよ!!」
「嫌だ」
「お願いします!!!!」

会話の繋がりを理解していないのか、彼は頭を下げて私に何回もお願いします!!と言った。
可愛い女の子達にこの姿をみせたらきっと、彼女達の夢が崩れるだろう。
そんなことを考えていると、だんだん掴まれた手が痛くなり、更には土下座まですると言い出した。
そんなこんなで、私は彼の誕生日の日に一緒にいることを了承してしまったのだ。


***

次の日の放課後、たくさんのプレゼントを貰った彼の後について行って彼の家に行った。
本当は行きたくなかったけど、「変なことなんかしないから!!」って言われたので断れなくなったのだ。

意外にも、部屋は綺麗に片付けてあってバスケの雑誌やファッション雑誌が置いてあるだけだった。彼は私のことをみて、楽しそうに笑う。

「なに?」
「いやっ、なんでもないから!! ...あっ」

彼は立ち上がり、冷蔵庫のドアを開けると、その中から小さめのワンホールケーキと、オレンジジュースを取り出した。
ウキウキとした顔で、ろうそくをたててコップにジュースを注ぐ。一緒に歌を歌おうと言われたが、嫌だと言った。

「なまえちゃん、オレ誕生日なんだって〜!!」
「昨日聞いた」

私は、めんどくさい彼を横目にライターで火をつけた。
ゆらゆらと火が揺れる。
彼は、それを見つめると嬉しそうに火を消した。

「おめでとう」
「えっ...!! なまえちゃんがおめでとうって言ってくれた!!」
「ウザい」

私は、彼の意図が分からなかったのだ。
彼のことを好いている人は何人でもいるのに、私をわざわざ呼び出したのか。
彼は私のことを知らないのに、どうして私を選んだのか。
考えれば考えるほど、頭がぐるぐるしてきた。

「食べよう」
「...ありがとう」

彼は私にケーキを渡すと、今日あったことやどうでもいいことを語り始めた。私は適当に相槌を打って、何故か自分の思ったことの答えを探すことに一生懸命になっていた。

「なまえちゃん、聞いてる?」
「んー、うん」
「オレさ、なまえちゃんのことが好きなんだけど」
「うん、...は?」
「だから、なまえちゃんのことが好きなんだけど」

彼は、耳を真っ赤にさせて私の顔を見た。
いつもはみれない彼の表情。
とてもクラスの可愛い女の子を泣かせたり、傷つけるような人にはみえないのだ。

「オレ、ずっと好きだったんスよ」
「うん、ありがとう...?」
「なのになまえちゃん、オレのことみてくれないし...」

彼は、私の隣にくると私に抱きついた。
やめてと言うはずなのに、何故か言えなくて彼の体温を感じていた。

「誕生日の日ぐらい、わがまま言わせて...?」

彼が私の背中に回した手を少し強める。
どうしてか私も、耳まで顔が赤くなった気がした。


溺れてくれよぜんぶあげるよ


私は、彼の言葉にコクリと頷くとさっきの疑問の答えをみつけたのだ。
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