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今日は6月18日。オレの誕生日だ。けれどたくさんの人に祝ってもらって嬉しかったこと以外は、特にいつもと変わらなかった。朝はロードワークをしてから朝練に参加、眠気と戦いながらも授業を受けて、友達とくだらない話をして笑って、放課後も大好きなバスケをする。ただ、いつもと違うのは、今日だけは自主練をしないということ。なまえが教室で待っていて、一緒に帰るから。

「なまえ!お待たせ!」

教室に行くと、なまえは音楽を聞きながら窓際の自分の席に座りながらオレンジ色に染まった空を眺めていた。教室に入ってきたオレに気付いていない彼女をぎゅーっと後ろから抱きしめる。

「わっ、涼太!びっくりしたー、早いねえ」
「へへ!急いで着替えてきたんス!」
「そっか、ありがとう!部活お疲れさま」
「うん」

抱き締めていた腕の力を強めて首に顔を埋める。なまえはくすぐったそうに笑って身を捩るが、すっぽりとオレに収まっているため意味がない。

「んーー…充電中だから動かないで欲しいっスー」
「えー?これから涼太の家に行くんだからいっぱい充電できるよ?」
「家族がいるからすぐにはできないじゃないっスか!しかも姉ちゃんはなまえを離さないし」
「んーーー」

なまえとは幼なじみで学校もずーっと一緒。中学を卒業するときにオレが告白して付き合ったけど、彼氏彼女っていう肩書きがついた位で関係は特に変わっていない。小さい頃からオレはなまえが可愛くて可愛くて仕方なかった。でもそれはオレだけじゃなくて、黄瀬家全員がそう。毎年家族となまえが誕生日の夜に祝ってくれるのだけど、姉ちゃんがなまえを独占。アンタはなまえと毎日一緒に居られるんだからいいでしょ!って。なまえは割とうちに遊びに来るけど、そのたびに姉2人はそれを理由にしている。

「涼太、充電満タンになった?」
「まーだー」
「えー、私ご飯作る係なのにー」

なるべく早く帰らないと手伝いができなくなっちゃうんだけどなあ、といいつつ、まだ顔を上げないオレの頭を撫でてくれるなまえ。オレの誕生日の日は、うちの女性陣と豪華な料理を作ってくれることがいつからか毎年恒例になっている。

「オニオングラタンスープ、早く食べたいでしょ?」「…食べたい」
「よし、じゃあ…」
「なまえ?」

なまえは優しくオレの腕をほどいて椅子から立ち上がった。それからつま先立ちをしてぎゅっとオレを抱き締める。背伸びをしても全然オレの身長よりも低いなまえ。可愛い。まじ可愛い。ゆるんだ頬を気にせずに彼女の腰に手を回して、コツンと額を合わせた。

「涼太の家にプレゼントを置いてあるんだ」
「本当っスか!毎年ありがとう」
「うん!早く渡して喜んでもらいたいし、私が手伝ったご飯も食べてもらいたいからもう帰ろう?」

なまえの顔がもっと近づいたと思えばふわりと唇が重なって、すぐに離れる。ぴしりと固まったオレを見て、なまえはにっこり笑った。え?待って。あれ、いま、なまえから…?

「………」
「今度こそ満タンになった?」
「…え、ちょ、え!?」

へへと少しだけ恥ずかしそうにするなまえに、自分の顔がカーッと熱を持つ。初めて!キスしてもらった!なまえから!うわ!めっちゃ嬉しい!顔が赤いままだけど、がばっとなまえに抱きついた。

「なまえ!大好きっス!」
「私も涼太のこと大好きー!」
「今日はうちに泊まって欲しいっス!たくさんいちゃいちゃしたい!」
「えー、ちょっと恥ずかしいけど……いいよー」
「ああああもうほんっと可愛い!大好き!」

一年に一度の誕生日。いつもとそんなに変わらないけれど、いつもよりも幸せだと思った。





「涼太、いつもありがとう。誕生日おめでとう!」


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