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「おはよー」


朝、あたしが教室に入るや否や飛びついてきた黄瀬はきらきらと笑っていた。いつもきらきらしてるし笑ってるんだけど、今日は特別ひまわりみたいだ。でもそっか、今日は6月18日だから、そっかそうだな。


「おはようなまえっち!今日なんの日が知ってる!?」
「知ってる知ってる黄瀬の誕生日でしょ」


当たり、と言ってまた笑う黄瀬はやっぱりいつもよりきらきらしていてまぶしい。いつもみたいに馬鹿じゃないの、とか憎まれ口なんて叩く余裕もないくらいきらきらきらきら、うるさいくらいだ。このまぶしいのはあたしのせいなんかではない、決して断じて違う。そう、全部こいつが悪いんだ。


「だから今日は俺の好きなことしようって決めてたんスよ!」
「へー」
「なまえっち、こっち来て?」


ぼん、と火が吹き出そうなくらい勢いよくあたしの顔は赤くなった、と思われる。なんで今日いきなりそんなこと言うの、びっくりするし。ていうか、あたしだって黄瀬の好きなことさせてあげたいって思ってるけど。でも一応ここ教室だし、スキャンダルとかまずいだろうし。


「こ、こじゃだめでしょ」
「人がいないとこならいいんスか?なまえっちやらしー」
「ちがっ、そんなんじゃないから!」
「そんな顔で言われても説得力ないっスよ」


あたしの顔はさっきよりずっとずっと赤い。と、断言できる。ぼすっと黄瀬の脇腹に拳を入れると痛いという声と共に黄瀬の吐息が降ってきた。あ、なんかちょっと緊張する、かも。顔をあたしの肩にうずめた黄瀬が誕生日なのに冷たいとか文句を言っているからせめてもの、今は本当にせめてものお詫びに頭を撫でる。さらさらの髪だとか頭を撫でるたびに香るシャンプーだとか、あと他にもたくさん。


「…好き」


黄瀬の全てが全部愛しくて、思わず黄瀬の瞼にキスを落とす。離れた瞬間にえっちょっとなに今の、とか色々言われたからあたしはそれを全部イヤホンで遮った。どうしても聞いてもらえないとわかったのか黄瀬は話しかけてこなくなった。それが寂しいのは存外あたしだったりして。

ねえ、生まれてきてくれてありがとう

しばらくして急に音楽がなくなった。ぱっと顔をあげた目の前の黄瀬の存在を認識したときには時既に遅しと言うべきか、黄瀬に唇を絡めとられていた。


「ちょ、黄瀬、」
「俺誕生日なのに冷たくした罰っス」
「だからってなんで…!」
「なまえっちがキスとか嫌がるの知ってるんスよ?照れ屋だもんねなまえっち」
「ふざけ…ちょ、ま、っ」


とりあえず色々いっぱい言いたいことはあるけど、誕生日おめでとう、黄瀬。ただこれはちょっといらっときたからあとで叱ってやる。きらきらきらきら、瞬くように過ぎていった、6月18日のお話。


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