50万筆頭祭 | ナノ

「海に行きましょう!」

そう満面の笑みを浮かべた夢子は、そのまま続けて「……今度こそは二人っきりで」と小さく呟いた。

近くにいた猿飛が「うはーっ、もうやだやだ。ただでさえ暑いってのに」と大袈裟に肩をすくめ、それを聞いたらしい元就には「……外泊したら焼け焦がすぞ」と脅される。

夢子と付き合うことになってから今まで、諦めの悪いコイツらに邪魔されてきたが、どうやら今度こそは二人っきりの逢い引きになるらしい。……否、大人しく身を引くわけねぇから、油断は禁物だ。顔を背けた幸村と政宗と菊一が怪しいしな。






「……奇跡だ」

今なら変な宗教に入れるかもしれねぇ。否、冗談だが。

青い海を眺めながら、隣で微笑んでいる夢子の手をそっと握った。
誰にも邪魔されず、無事に海にまでたどり着いたためか、心は既に躍っている。

「……ふふ、元親さん、では着替えたらまたここに戻ってきてくださいね?」

「お、おう!夢子も、道に迷うんじゃねぇぞ?」

日差しのせいか、二人っきりという状況のせいか、夢子の笑顔が五割り増しほど眩しい。
くそう、これで俺のために水着になるんだろ?!駄目だ、理性が保つ自信がねぇ!!




別れてから僅かな時で俺は元の場所に戻ってきた。先に場所取りをしてもいいが、この場にいなければ夢子が迷いそうな気がして動けない。

「……あのぅ」

「…………あ?」

不意に声をかけられ、その声の主に振り向けば、そこそこの美人だった。
俺の視線に笑顔を浮かべ「もしお一人なら〜」と続けてきたので、あぁいつものアレかと気付く。この世界の女はかなり積極的らしいな。

「悪ぃーが、俺には――」

そこまで口にしながら、ふっと今までのことを思い出した。

夢子のことである。
アイツはかなり人目を引く。というより、男の視線を釘付けにしちまう。特に、あの胸がダメだ。前も海で……

「――夢子っ!!」

俺を見上げていた女から視線を外して、こちらに向かってきていた夢子の元に走った。
全力疾走したが後悔はない。

「元親さん?どうかしまさたか?」

「ちっ、男連れかよ……」

キョトンと俺を見上げる夢子の両肩に手をおいて脱力した。

「……くそう、めちゃくちゃ好みなのに」

「スタイルいいなぁ」

俺が気づくのが遅ければ声をかけていただろう野郎共からの羨望の眼差しというか嫉妬の眼差しにホッと息を吐く。
危ねぇ。
元就たちだけじゃねぇんだよな……。

今なお続く夢子をいやらしく見る野郎共の視線を一掃すべく、俺は周囲を睨んだ。
すぐにざわつきが静けさに変わるが、どうせまた別の野郎共の視線が沸いてくるんだろう。


「……夢子、あそこにしようぜ」

「え……泳ぐ場所から少し離れちゃいますけど?」

視線が気になって人気のない岩陰近くの場所を指差したら、夢子がまた首を傾げた。
……野郎共への牽制で忙しかったせいで、ちゃんと見れなかったが、夢子の水着は淡い紫色の上下に分かれているやつだ。あの、こっちの世界の下着に近い格好である。

「……っ、い、いいんだよっ、その――」

「元親さん?」

「――お前がんな格好してるからだろ……っ!他の野郎に見られたくねぇし、……っ独り占めしてぇんだよ」

つい人気が多いということも忘れて、唇を重ねた後貪るように夢子の口内へ舌を入れた。
唾液の音にさらに興奮して、そのまま胸を揉んじまったり、尻を撫でてしまったが、取りあえず男の性だ。



「……うぅ、元親さんの馬鹿……っ!」

その後暫く夢子の機嫌を取ることに一生懸命になっている内に、近くにやってきた団体が菊一たちだったというオチまでつくのだった。

俺の女=夢子

  
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