50万筆頭祭 | ナノ

――夢子と付き合ったつーのに、相変わらず他のヤツらに嫉妬する毎日を過ごしている。

否、夢子は俺だけを男として愛してるとは言ってくれてるし、いつも俺のそばにはいてくれているつーのは分かってるんだけどよ……。



「きゃ、……あ、小十郎さん、すみません……っ」

居間でソファーに寝転がってテレビを見てたら、不意にそんな夢子の声が聞こえて慌てて振り返る。
風来坊がそんな俺に苦笑していたのが見えたが、それにつっかかるような真似はしない。

今はそれよりも、居間の入口で片倉に身を預けている夢子の方が重大だ。

「……お、おい、何やって」

「……馬鹿なこと考えんじゃねぇぞ。夢子がリンゴを剥いて来たらしいが、今ここで転びそうになったのを支えただけだ」

「助かりました……本当に」

申し訳なさそうにもう一度片倉に頭を下げた夢子は、体制を整えるように体を離して俺に小さく微笑む。
その綺麗な微笑みに、思わず浅慮な己が恥ずかしくなった。

信じてるはずなのに何を心配してるんだ、俺は。

「……夢子殿、でざーとっでござるか?!」

「ふふ、そうですよ。幸村さん」

「ならば早く運ばぬか」

「あはは、はい、元就さん」

だが、すぐに俺から視線を外してパタパタと大皿を運ぶ夢子にまた不安になった。
幸村や元就に笑顔を浮かべて返事をするだけで、胸の中でモヤモヤする。

相変わらず、無防備な夢子が誰かに取られてしまいそうで……
すぐに俺よりも違う野郎に惹かれそうで……


「……元親さん?」

「うわっ、夢子?!」

意識を飛ばしていた俺の目の前に夢子の愛らしい顔があって驚いた。
キョトンと俺を見上げるその表情に胸が切なくなる。

「……大丈夫ですか?なんだかボーっとしていますよね?熱とかないですか?」

「い、否、これは……その」

なんて口にしろっつーんだ。
うだうだうだうだと、女々しい嫉妬してんだって言えるわけねぇ。

目線を泳がせていたら、夢子の手に、居間のでかいてーぶるに置いた大皿とは違う硝子の皿が乗っていることに気づいた。
その中に可愛らしく切られたリンゴが数個。

「……こりゃあ、兎、か?」

「あ、はい!これは元親さん用ですから」

はにかみながら笑った夢子にきゅうんっと胸が苦しくなる。

か、可愛い……!
俺の夢子は可愛過ぎやしねぇか?!

「……夢子っ!」

思わず抱きしめて深い口付けを落としたら、居間にいたヤツらから一斉に「部屋に行け」と怒鳴られた。

うさりんご

  
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