年下なのに
「……平にすみませぬ、越後屋さん」

「…………ちっとも反省しているように見えないんだけど」

彼の部屋に入れてもらった直後に、勢いよく土下座してみたのだが、どうやら誠意は伝わらなかったようだ。

「…………ごめんなさい、越前さん」

「……はぁ、別に気にしてないし。……それよりアンタ、雷が鳴る時いつもあんななの?」

「……みたいですねぇ」

あんななの?と聞かれても正直よくわからない。パニック時はどうやら記憶が曖昧になるらしく、今も目の前にいる帽子の少年が越前さんだというのも疑ったぐらいだ。
というか、まさかあの綺麗な瞳の子が越前さんだとは。

「……越前さん、一年生でしょうか?」

「そうだけど。……アンタもでしょ?」

「違うよー越前くん、私は二年生だ、ははは」

「うわ、ムカつく。何急に態度変わってんの」

だって私の方が先輩だもん。一年だけど。事故とはいえキスしてしまったことへの申し訳なさから、丁寧に話していただけで。基本目上の人以外には敬語で話していない。

若干テンションが可笑しいのは、私もファーストキスだったからで。
なんというか、やはり気恥ずかしいからです。このテンションはただの照れ隠しなのだ。

「じゃあ越前くん、私はこれで失礼するよ。君のような美少年ならば、きっと私の事故など遥かに超える素敵なキスイベントが待っているに違いない!Let's enjoy!人生!!」

「……アンタ、阿呆だろ。否アホだよね絶対」

「………………傷ついた、硝子のハートが傷ついた」

「……俺は唇汚されたけどね」

ニヤリと口角を釣り上げた越前くんに、思いっきり眉間に皺を寄せる。

どうしよう、この子、Sの子だ。確実にドSの子だ。

年上だと知っても容赦ないその口調と性格に軽く溜め息を吐き出す。
気にしてないって言ったのに、とんだ嘘つき少年である。

「……もう。許してくれたんじゃないの?越前くんはケチだね」

「ふぅん、そんなこと言うんだ。……まぁいいけど。とりあえずリョーマでいいよ。それで許してあげる」

流夏ちゃん曰わく私はドMの天然らしい。
それならばこの越前くんから見事な標的になってしまいそうなので、少し強がってみたのだけど、手遅れだった。

「……リョーマ、くん?」

「そ。……アンタ、見ていて厭きないし。この合宿の間退屈しなさそうだから。ま、よろしくね。……詩織セ・ン・パ・イ?」

耳元で囁かれた台詞。なんて色っぽい声を出すんだ。最近の中学生は!

まったくけしからんっっと叫びながら、私は廊下に逃げ出した。そして、どうやら廊下で私を待っていたらしい菊丸さんとぶつかったのだった。

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