ミイラ取りがミイラに
「夢野さん、僕の恋応援してください!真面目に貴女との恋の成就をっ」
「きさから聞いてたら……やーは本当にふらーやしっ!」

席から反対側を向いて同時に口を開いた六角の葵と比嘉の平古場に頭が痛くなる。

俺たちルドルフは、夢野が座っている座席の真横の座席にいて。
その夢野たちが座っているテーブルの反対側の隣がそれぞれ六角と比嘉席だったのだ。

同時に発して重なった台詞にムッとしたような表情で葵と平古場が睨み合ってた。

「……はっ!よく考えたら応援しちゃダメな人がいる……っ!す、すみませんって謙也さんに謝った方がいいのかな、あ、でも今そんなこと言っちゃ……っ」
「……へぇー。それって忍足くんは気持ち伝えたってこと?」
「クスクス、そういうことだよね」
「そうみたいだな、淳」
「それはそれは……面白いデータを頂きましたよ。んふっ」
「ごめんなさいっ」

ガンッと盛大にテーブルに突っ伏した夢野は、もう少しで麻婆豆腐に額をダイブさせるところだった。
慌てて避けた白石がすごいと思うだーね。

口元に手を持って目を細めた千石と、淳と顔を見合せた木更津亮もだが、観月も悪そうな顔をして笑っている。
裕太は「え?えっ?!」とキョロキョロした後、何やら財前と室町と伊武を交互に見てた。
神尾が「お、俺も聞いてないっ」と一緒になってその三人を見るが、どうもその三人も少なからず動揺しているようには見える。
……っていうか、本当になんなんだーね。
こいつら、皆あの夢野に少なからず気があるってことだーね?

そう疑問に思ってから夢野をもう一度見たら、忍足謙也が「お、俺は大丈夫やから。初めっからバレバレやし……」と夢野の肩を撫でているところだった。

「……この阿呆の子のどこがいいだーね……」

ついポロリと口から盛れてしまった台詞に目の前の金田が「柳沢さん、それ言ったら……っ」と口をパクパクさせていて、しまったと思った。

「そうだな。その質問はデータを集めるのにいいかもしれない」

どこから現れたのか乾がメガネをキラリと光らせて俺の背後に立っている。
や、辞めるだーね!心臓が口から飛び出して死ぬところだっただーね!!

「そんな死亡例はないと……」

俺の心を読んだのか、乾が否定しながら俺の顔を見て、ニヤリと口角を上げた。

「……思考回路が近いのか。ふむ、面白い」
「な、何がだーね!わけわかんないだーねっ」

それからズルズルと自分のラーメンを啜る。危うく冷めて不味くなってしまうところだった。

「いやーん、ユウくん、あそこの席、恋の火花がたくさん散ってるわぁ☆」
「な、なんで俺を押すねん!小春!」

「ぶーぶー!姿見えないと思ったら、あそこだったのかにゃー!」
「ふふ、賑やかだったから気付かなかったね」
「…………なんか胃が痛い……手塚、み、水を」
「大丈夫か?大石……」

賑やかになっていく様子に、まさかあそこの奴らも?!ってなって驚いた。
いやまぁ薄々あのサバイバル合宿やこの間の夏祭りで気づいてはいたが、なかなかこれはヘビーだーね。

「……ちょっとお手洗いに行くだーね」

ちょっとした言い合いを初め出した比嘉と六角のメンバーを見ながら、席を立つ。
トイレに向かったら、氷帝の平部員やギャラリー合わせた大人数の席側も見えて、その中でレギュラーのいつものメンバーがチラチラと夢野の方を気にしているのが見えた。

……初めから、人数絞ったらよかっただーね。
そんなにあのアホの子が気になるなら。

まぁさっきちらりと聞こえた話から、夢野が嫌がらせされるのを未然に防ごうとした結果なんだろうが。
わかり易すぎて、余計に変なことにならなければいいだーねと思う。

用を足してから、手を洗ってトイレから出てきたら、女子トイレ前で夢野が立っていて、突然自分の顔を両手でパンっと勢いよく挟んだからビックリした。

「な、何やってるだーね?!」
「はっ!戻る前に気合いを……と!」

あと、勝手に動くこの口をどうにかこうにかしたいと思いましてっ!と口をむにゅむにゅと抓り始める。

「いやいや、赤くなるからやめるだーね」
「はっ!確かに……!!わ、わかっただーね!」

唇を尖らせながら、また物真似をしてきた夢野にイラッとした。

「お前、本当にいい度胸だーね!」
「柳沢さんの物真似、似てるって言われるだーね!」
「それ言った耳悪いやつ、連れてくるだーねっ!」

後ろから夢野の首元に腕を回して、ぐぐぐっと締め上げる。

「や、柳沢さん、ギブ、ギブですっ、死にますっ、私っ!ごめんなさい、許してくださいっ」

「まったく……」

ぱっと手を離したら、けほけほ言いながら振り返った夢野が白い歯を見せて「悪かっただーね、反省は一瞬しただーねっ」と笑いながら言って逃げた。

「お、お前っ……!ぜ、全然反省してないだーねっ!!!!」

むっかーとしながら追いかけるが、既に夢野のアホは座席に戻ってて、千石を盾にして隠れている。

く、クソ!ほんとクソだーね!

……さっき一瞬でも、笑顔が可愛いとか思ったのは、気の迷いに違いないだーね!!

だから俺は全然このアホの子──夢野を好きなやつの気持ちが、これっぽっちも、一ミリも理解なんかできないだーね!!!

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