パンダ抜きのグループで
「はぁ?今からグループ作るから送るって……え、ちょ、待てよ、深司?!」

──プツン

勝手なことを吐き出してから通話終了させた深司に頭が痛くなってくる。

そしたら、すぐにピロンっと音が鳴った。

買ったばかりのスマホの画面を見つめれば、深司からメッセージアプリのグループ会話への招待だった。

「はぁ……まったく、なんなんだか……」

まだ使い慣れてないスマホの画面をタップする。
スマホに変えたぜー!って電話したら「ちょうど良かった。神尾もちょっと来て。招待送るから」だもんな。意味わかんねー。




Davil(赤也)>お。ホントに来たー!

善哉(光)>ほんまや。神尾やわ

eleven(十次)>神尾、よろしく。俺、室町だから

日吉若>……というか、本当になんなんだよ。このグループは

長太郎>スマホ持ってる二年生だけのグループってことかな?

金田>ごめん、俺なんかが混じっててマジごめん……

新垣浩一>大丈夫やし、金田。わんも違和感しかないさー

次々と表示されるメッセージを追うだけで頭の中はハテナがいっぱいだった。
いやスマホ持ってる二年だけってのは分かったんだけど。

神尾>俺、今日スマホ手に入れたとこで、ちょっと反応遅ぇかも

Eve(深司)>スピードに自信あるんじゃないのかよ……

神尾>くそ、深司のアホ!俺のリズムを見せてやるぜ!!どうだよ、ほら!!

腹が立ったので速攻で返信してやる。

裕太>あの、ごめん。俺も昨日手に入れたところで……遅いかも

桃>奇遇だな!俺もDAZE!

Davil(赤也)>ぷぷっ。桃城変な変換になってやんの!

日吉若>言っておくが切原。お前デビルの綴り違うからな。Devilだぞ馬鹿

Davil(赤也)>え?!

善哉(光)>日吉のアホ。オモロかったのに教えんなや

桃>やーい切原のダビルーアホーやーいやーい


……ガキかよ、コイツら。
いやまだ中学生だからガキではあるけども。


長太郎>とりあえず、今会話してたメンバーで全員かな?


鳳の台詞にもう一度メンバーを見て人数を数えたら、全体数に一人足りない。


善哉(光)>いやあと一人……

ダビデ>「イワシ・タイ・ナマズ」って言わしたいな、まず

善哉(光)>沈黙長い割にダジャレのレベル低いやんけ。とりあえず、これで全員発言したな


合宿の時は天根もスマホではなかったような気がしたが、俺と一緒で最近変えたんだろうか。
そんなことをぼんやりと思っていたら、日吉が「で、このグループで話し合いたいことってなんだ」とメッセージを打ってて。
俺もそれ気になる!と画面を見つめた。


Devil(赤也)>それ、俺が収集かけたっつぅーか?

金田>ごめん、切原。招集の間違い……?

Devil(赤也)>あ、それそれ!


切原は相変わらず馬鹿だなと鼻で笑いつつ、次の言葉を待つ。ってか、こいつ、いつの間にかさらっとスペル間違い修正したな。


Devil(赤也)>なぁー、財前ー、これ、やっぱ文字じゃなくて通話にしていい?

善哉(光)>ええけど……他は大丈夫なん?

裕太>あ、今誰もいないからいける

Eve(深司)>俺もそっちでいいよ。切原に文字で語らせたら、なんか朝まで掛かりそうだし……


確かに深司の言う通りだ。
他のメンバーも自室だったり、周りに誰もいないからオッケーって話になって、グループ会話は通話になった。



『よし……あーあー、聞こえるかー?』

『聞こえとるわ、アホ。デカい声出すなや』

『もうどうでもいいから、早く本題にいってくれないか。イライラしてきた……』

日吉の台詞に切原が咳き込んで『実は……』と思い詰めたような声を出す。

『うちの先輩が二人、立海に来てた夢野に告白したらしーんだけど……』
『『はぁ?!』』

重なった台詞が誰が誰かなんてわからない。
でもつい俺も声を発してしまっていた。

『いや、しかも、その、その内の一人は夢野を抱き締めて?もう一人は……その、キスまでしたとか……』

最後もごもごと言いにくそうになっていく切原にまた盛大に「はぁ?!」と声が出た。

『……あひゃー……大変なくとぅんかいなとーんどーやー。本土っしぇー』

新垣の台詞に何言ってるか分からんってなりつつ、やつもちょっと動揺してるのかなって思う。

『ちょっと待て切原』
『そのふざけた人達誰なの?』

日吉と鳳がほぼ同時に発言して、俺もそれは気になると切原の言葉を待った。切原の沈黙の間、ずっと後ろで深司のボヤきが聞こえていたが全員何も言わないとこを見ると、切原の台詞待ちなんだろう。

『…………柳生さんと、……キスしたのは……ウチの部長ー……』

『……はっ、柳生さんは置いといて、幸村さんは予想通りやな』

『つか……なんで詩織のバカは立海なんかに……なんだよ、ほんと……ムカつくなぁ』

『き、聞きたいんだけど!詩織は……そのっ』

財前、深司、室町と声を発して、最後の室町の台詞が俺の聞きたいことと丸々一緒だった。

『……泣いてた、みたいで。丸井先輩と仁王先輩が落ち着かせた、とは思う……けど、俺、その二人にも実はモヤモヤしてて……てか、ジャッカル先輩も今までそんな目で見てなかったのに、突然夢野に惚れたみたいだし……俺もう一人で抱えるの無理だったんだよーっ!』

切原が泣きそうな声で叫んでいて、耳が痛い。
そしてなんか胸の奥がじくじく痛くなってた。

『……つぅかよ。切原、お前……夢野のこと好きなの?』

『っ、あ、俺は……っ』

桃城の声がやけに真剣で、切原の慌てふためいた声から、もうこいつ本当にダダ漏れじゃねぇかとため息を吐き出す。

しーんと静まり返った通話。
耳をすませばそれぞれのため息とか頭をかいてるような音とか漏れてた。


『……いや、ごめん。俺からいいかな。はっきり言うけど、ここで通話してる奴……俺以外は、皆夢野さんのこと好きだよね?あ、否定しないでね。俺、わかってるから……』
『金田?!何言って──』
『いや裕太もはっきり宣言してた方がいいって。もう俺、本当にわかってるんだってば』

金田の溜息混じりの台詞に俺はハッとして慌てる。

「金田!俺は違うからな!!俺は──」
『神尾、ごめん。それ、本当に心に誓って言えるならいいんだけど……。他のメンバーも否定したいやついると思うけどさ……』

金田の台詞にうっと言葉が詰まった。
確かに、あの時、夏祭りの金魚すくいの時に、俺は杏ちゃんより夢野のそばに居ることを自ら選んでて……。

『ここにいない二年生でも、だんだん気持ちが揺れてるやつがいるのは見ててわかるし……だから、切原は無意識に俺らを頼ったんじゃないのかな?三年生に負けるくらいなら、ライバル同士でも二年生で協力した方がいいって』

金田ってこんな的確に喋るヤツだったっけ……と思いつつ、肝心な時にはしっかりするタイプなのかもしれないと思った。

『まぁ正直に白状するけど、俺は詩織が好きやから。お前らにはやらんけどな。特に日吉と伊武』
『ナチュラルに俺を飛ばすの辞めろよ……』
『せやかて室町パンダ枠やんけ』
『この間嫉妬してたくせによく言うよ……』

はぁっとため息ついた室町。
そういえば、黙ってる鳳とか天根や新垣もそうなのかとか、ちょっと驚く。

『……敵はここにいないから俺にはどうでもいい』
『しばいたろか、日吉』
『だが、情報をやってもいい。氷帝は今忍足さんと芥川さんがほぼ本気だ。向日さんも先日ちょっとおかしかった気はする』
『……俺は言いづらいけど、最近の宍戸さんも……あと、跡部さんはどうなんだろう?』
『あの人は……どうだろうな。今のところ保留だ。ただ夢野の馬鹿は心から信頼しててそっちの方がウザい……跡部さんのこと、樺地ならわかるかもしれないが』

忍足さんと芥川さんはそうだろうと思っていたけど、まさか向日さんと宍戸さんもかよ。と目を見開いた。樺地がいないから、跡部さんは今のところ違うことにした。
ちなみに樺地がスマホを持っているのにここにいない理由は、この時間だともうスマホを触らず寝るからとの事。

『ウチは白石部長と謙也さんが本気出して来よった。あとユウジ先輩も最近おかしい。千歳先輩はようわからんけど、注意はした方がええっすわ』

『俺のとこは橘さんはよくわかんないかな……なんか俺の事応援してくれてるし。でも、ちょっと最近違和感は感じてる……神尾以外の二年なら内村はなんかアレなんだけど』
「は?深司、内村は違うだろ?」
『……神尾は他人見てる暇なかっただろ……』

『お、俺のところは、観月さんが……あと、木更津先輩も……』
『うん。裕太の言う通り、その二人だね。赤澤部長は前より夢野さんと親しくなったけど、まだ大丈夫だと思う。ただ、柳沢先輩も微妙に構ってるような気はしてる……俺が見た限りは』

『淳さんも、か……。亮さんも、たぶん、夢野のこと、気になってると思う。……双子だけにサインなしでツインズ……ぷっ』

またつまらないことを呟いた天根に誰かが舌打ちしてた。たぶん……日吉と財前だ。

『あー……剣太郎は一年だからいいのか?サエさんは……よくわかんないな……輪っか、ない……ぷっ』

『青学は一年の越前合わせて全員なんかおかしいぜ。ただの興味だと思ってるけど……菊丸先輩はなんか好きな気はする。でも俺、あんま他人のことわっかんねぇーし。とりあえず、後でマムシにも聞いてみるわ』
『あ、兄貴は……少し好きなんじゃ、ないかなって、俺は思う……』
『へぇ、不二先輩がねぇ。弟のお前が言うんならそーなんかもな……』

頭をかいてるような音が桃城の後ろから聞こえてきた。桃城もだとか、ちょっと信じられねぇけど。そういえば、海堂のやつ、夢野に対してすっげー優しい顔してるの見たことある。
不二裕太は兄貴を気にし過ぎで、あの不二さんが本当にそうなのか俺にはわからない。

『俺のとこは……千石さんかな』
『……室町知らんやろうけど、亜久津さんもアレ大概やわ』
『え?!本当に?!えええ……』

『あー……申し訳ねーんしが、こっちは甲斐さんがしちなってぃそうな気がした。あと、平古場さんはメッセージやり取りそーししが、意外と普通がやーあとの先輩らは、ちょっと何考えてるかわからんさー』

最後に新垣がそう言って、全員で盛大にため息をついた。
重なったそれにマジかよって思いながら、幸村さんが夢野にキスしたのか……ってそればっかり頭の中にグルグルして。

アイツの唇……柔らかそうだった。
キスってどんな感じなんだろう。

「……はっ?!アイツとのキスなんて妄想してないからな?!」

って叫んでしまって、深司には「……神尾のこと呼ぶんじゃなかった。思いっきり自覚し始めてウザイ……」とか言われるし、財前には「それ以上のこと妄想したらしばくで。いやしばき足らんわ。室町と一緒に紐なしバンジーさせたるからな」と脅されたのだった。
「だから死ぬけど?!普通にな!!」って叫んだ室町が、いつもこんな会話してたんだなと思ってちょっと憐れに思えた。

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