綿菓子みたいに甘く
──つぅか、面白くねーなぁ面白くねーよ。

イカの丸焼きを口に頬張りながら、頭をかく。
見知った顔だらけの祭りにため息しか出なかった。
つか、普通に祭りを楽しんじゃってるけど、今日の目的はそうじゃねぇだろーっとまたガリガリと頭をかく。
いやしかし、なんでこんなテニス部のヤツらと出会うかね。

「あ、詩織センパイ」

後ろを歩いていた越前の声に反応して、越前が向いている方向を見たら、射的ゲームで景品が取れたのか、友達の女の子とはしゃいでいる夢野の姿があった。

そうそう、目的は今回はこっち……

「わぁ巨大な黒にゃんだー!薫ちゃん薫ちゃん、これあげるー!私の家、パンダくんたちだらけだから、薫ちゃんの家の方がこの子喜ぶと思うしっ」

「え、いや……お、俺が貰ってもいいのか……?」

「うん!薫ちゃんが教えてくれた通りに狙ったら当たったし!」

「さ、サンキュー……な」

巨大な黒猫のぬいぐるみを抱きしめながら赤くなったマムシの野郎は気持ち悪い。いやそれ以前に俺が誘ったのに(正しくは菊丸先輩とだけどよ)何マムシの野郎が一緒に夢野と回ってんだよ!

「ねぇ詩織センパイ、俺にも何か取ってよ」
「リョーマくんには絶対何もあげないもん」
「ケチ」
「け、ケチじゃなくて、これはリョーマくんへの仕返し……っ!」

マムシへの対抗心を剥き出しにしていたら、越前のやつがつかつかと夢野に話しかけてた。

あああっ、と気づいた頃には六角の佐伯さんや葵が夢野に近付いている。
それに対して笑っている夢野の横顔を見ていたら妙に焦った。

何か、何かいい手は──



「夢野っ、ど〜んっ!」

「わっ!綿あめだっ!!」

佐伯さんが夢野の友達に捕まってる隙を見て、夢野の前に巨大な綿あめを差し出す。

「夢野にやるよ」

「なんで?嬉しいけど、一人で全部食べられないよ。桃ちゃんも一緒に食べよう?私も有難く貰うから」

「お、おう」

へらって笑ってくれた夢野の笑顔に、俺はよく頑張ったー!と自分を心の中で褒めてたら、パクリと誰かの手が綿あめを取った。

「……甘い。よくこんなの食べられるよね……砂糖だよ、これ」
「いや砂糖だよとか言うなら食べるなよ!俺はすっごく好きだぞ!綿あめっ」
「裕太は甘党だーね。ところで夢野。言うの忘れてたけど、その浴衣馬子にも衣装だーね」

不動峰の伊武と、不二先輩の弟の不二裕太。そしておまけで柳沢さん。

「もう!柳沢さん、うるさいだーね!」

綿あめを頬張りながら頬を膨らませて柳沢さんに怒る夢野は可愛いけど、違う。俺がしたいのはこういうことじゃない……!

「つかお前ら、勝手に食うんじゃねぇよ!!」

「え、さっき、詩織にやるって言ってたじゃん。つまり……詩織が食べていいって言うなら食べていいんだろ……?詩織、俺、食べていいよね?」
「え、うん……たぶん?」
「ほら」

ふっと口角を上げた伊武にイラァっとした。

あーもう知るか!!と、とりあえず、無心で綿あめを一緒に食べる。
あっという間に綿あめは消えていった。

「あはは、桃ちゃん、鼻のとこについてるっ!」

それから最後の一口を口にしてた夢野が笑いながら背伸びして俺の鼻の上の綿あめを取ってペロリと自分の口の中に持っていく。
その一連の行動があまりにもアレで。

思わず屈んで夢野の唇の端に残っていた綿菓子を舐めた。
たぶん生まれて今まで味わったどんな綿菓子より甘かったような気がする。

「……ご馳走さ──ぶぼっ!!」
「わわっ、桃ちゃん?!」

後頭部と顔面に同時に攻撃を受けた。

「今のはアウトだにゃー……!」

後ろは菊丸先輩のチョップで。前は──

「……何してくれとるん?青学一の曲者クンは」

氷帝の曲者、忍足さんの持っていたヨーヨーらしい。

「きゃー!!跡部様ぁ!」

後ろで夢野の友達の子も声を上げていた通り、忍足さんの後ろには氷帝メンバーが揃ってて。

「ダダンダーンっ!!千石先輩っ、亜久津先輩っ!何やら一触即発の雰囲気ですよっ!!」
「てか詩織ちゃんの浴衣姿見れたね、ラッキー♪」

そして山吹の人らも増えてた。

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