何かがある
「ぬーがや、あの女」

「……どうやら我々以外とは知り合いのようですね」

甲斐クンの呟きに答えてから、眼鏡を中指で押し上げる。

どんな間抜けな理由かは知らないが、紛れ込んでいた女子生徒にしては歓迎されているようだ。

「そんなんどうでもいいさぁ。……っ、いっぺーまーさん!!」

「田仁志クン、食べ過ぎないようにしなさいよ」

用意された夕食をガツガツと食べ続けている田仁志クンを横目で見ながら、小さな溜め息をついた。

……この合宿の声がかかったときから、何か裏がある気がしている。
あの女子のおかげで余計にそれが確信に変わっていった。



「……またさぁ」

「?どうかしましたか、平古場クン」

「きさからあの女、くま見てるさぁ。やしが、わんと目があったらすぐ逸らすし……いみくじ分からん」

その言葉にちらりと先生方のそばのソファに座っている彼女に視線を向ければ、平古場クンをちらちらと気にしているような様子が窺えた。
……平古場クンは女子生徒が好む顔つきをしているのでそのせいかもしれないが、彼女が見ている理由は違うような気がする。
先生方に何かを尋ねた後、こちらを気にすることは無くなったので、やはり何かあったのだろう。

「……それにしても、何者なんですかね」

「……ぬーかいったさー、永四郎?」

「……なんでもないですよ、知念クン」

くっと喉を鳴らしてから上がっていた口角を下げた。


この合宿には何かある。
そして、彼女に対しても何かがあるんだろうと感じていたのだった。

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