まだまだイケるぜバーニング!
──だいぶ遅れている。やっぱりそうなると、マイナス思考なことが脳裏に浮かんでますます落ち込んでいった。

「……ハハッ、本当に情けないなぁ」

「何言うとるん?にーちゃんはえぇ人や」

ぽつりと呟いてしまったセリフを隣で一緒に走っていた遠山くんに聞かれていたらしく、そう返された。
少し会話がズレている気がするが、少し嬉しかったので笑い返す。彼の満面の笑みの白い歯が眩しかった。


障害物競争にて、逆走する遠山くんを止めたというのもあるけれど、元々最後尾グループにいたし、この順位は妥当なのかもしれない。

「あ……遠山くん、先に行ってくれていいからね」

「河村のにーちゃんは?」

「……たぶん、俺の脚じゃ君に追いつけないと思うし」

ハハッと情けなく頭をかきながら笑えば、遠山くんは俺の背中をバシバシと叩いてくる。

「なんで笑っとるん?!ワイ、そんなにーちゃん嫌やで!」

ずいぶん懐いてくれたんだなぁと思わず苦笑した。
真っ直ぐな瞳に見つめられると、うじうじと悩んでいただけの俺が恥ずかしくなる。


「河村さん!金ちゃん!!」

「え」
「おわっ?!ねーちゃん?!なんでここにおるん?!」

吃驚した。
真っ直ぐ延びた山道の途中に夢野さんが立っていたんだから。

「実は榊おじさんの抜け道がありまして……そんなことはどうでもよく。はい、河村さんにラケットと金ちゃん、絆創膏だよー」

「おおきにー!」

明るく笑って絆創膏を受け取った遠山くんを横目に俺は戸惑っていた。

「……でも、どうして?」

「……モニターで見ていたんですけど、逆走して転んだ遠山くんを助け起こしていたじゃないですか、だからこれはボーナスなんです」

「ぼ、ボーナス?」

「はい。一人だけに邪魔か手助けしていいと言われたので……本当は丸眼鏡先輩のとこでも良かったけど、真剣に頑張っている人を貶めるなんて大それたことできないのですよ小心者なんで……というのは黙っておこう。……こほん、取り敢えずラケットと……この障害物競争、観察眼が必要ですよ!」

途中きっと自分では口に出してるつもりのない台詞なんだろうなと思うものが聞こえたが、全力で聞こえなかったことにしておいた。

「……ありがとう」

「ボーナスやって!やったなぁ!ワイも負けてられへんわぁ!」

遠山くんの楽しげな声を聞きながら、そっと彼女からラケットを受け取る。


「うぉおー!燃えるぜバーニングっ!!まだまだここからだ!うおりゃあー行くぜ、遠山の金さんっ!詩織もありがとうなぁっ!!」
「な、なんやようわからんけど、にーちゃん元気なったんやな!ほな、ねーちゃん、また後でなぁーっ!!」

「あははー…………練習の時にも目撃したけど、目の前で見ると面白いなぁ……」



猛ダッシュで駆けて、ここから巻き返す!
そう気合いをいれながら、周囲や障害物をよく観察することにした。そこで気付いたのは、障害物に英数字が貼り付けられていることだ。

「……詩織、グゥレイトぉだぜ」

一人だけ手助けできる話が出て、その中で俺を選んでくれたのが嬉しかった。そしてその理由が、先ほど自然に手渡していた遠山くんへの絆創膏なんだろうなと気付いて、さらに目を細める。
軽い擦り傷ではあったが、血がだらだら出ていたのだ。きっと、それをモニターで見ていたんだろう。そのさり気ない優しさに彼女という人物がわかった気がした。



……さぁ、頑張ろう。まだまだ折り返し地点だ。

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