*童心にかえって

――ガラガラと

いつもよりも頑固な窓を力任せに開ける。

窓の向こうに広がる一面の白銀の世界につい「うへぇ……」と声が出た。

「うわぁ、積もったねぇっ」

嬉々として声を上げたのは、前田慶次だ。

ちらりと横目で見れば、歯ブラシを口に入れながら笑顔を浮かべている。

「……おや、菊一。珍しいですね」

朝から無駄に爽やかだなとか、低血圧なアタシはちょっとイラっとしたわけだが。

そんなアタシに変態が声をかけてきた。

苛っとくるどころか、寒気に襲われる。

「寒さに目が冴えた」

極力視界にいれないようにしながら、洗面所に移動したら大混雑だった。

……むさ苦しいな。おい。





『中庭も真っ白ですねぇ』

「そうですね」

朝食が終わりかけた頃、アタシの隣に座っていたお嬢が可愛らしい笑みを浮かべながら、中庭に視線を向ける。

「はははっ、では今日は雪遊びでもしよう!」

「なんでやねん阿呆か徳川家康」

『雪だるまとか作りたいですねっ』

「お嬢任せて下さいっ、アタシは雪職人です」


「……あはー、相変わらず菊チャンの変わり身の早さはスゴイヨネー」

呆れた口調の忍クンは無視することにした。


「Hum,monster!雪合戦とかどうだ?」

「唐突になんやねん、ウザイ馬鹿宗」

最近関西弁が出てしまう比率が上がっている気がするなぁとか思いながら、伊達の小僧に冷たい視線を向ける。

「……雪……合戦……、合戦でござるか!」

途端に瞳をキラキラとさせてきた真田幸村。

否、違う。
あんたの考えてる合戦違う。
だから、炎とか無駄に出すなよ。アタシ死ぬ。


『……雪合戦っ、楽しそうですねっ』

「「「っ!」」」

雪玉投げ合うなんて、寒空の下やってられるかと口に出そうとしたところで、無邪気に微笑んだお嬢に何も言えなくなった。

喜んで雪玉をやつらの顔面にめり込ませてやります。





「…………(すっ)」

「ちっ!」

二組のチームに別れた。

アタシのチームは真田に猿飛、前田に徳川、長曾我部に毛利、変態とお嬢だ。

向こうは、伊達と片倉、竹中、石田、大谷、黒田に、今し方アタシの攻撃を避けた風魔。


「お、おい、元就、アンタ何してんだ」

「黙れ鬼よ。雪玉の中に石を紛らわせただけだ」

「いったぁっ?!え、何これ、石の固まり飛んできた!何故じゃあっ」

「避けるな、家康ぅぅううっ?!」

「ははっ、避けるだろう!何を言っているんだ、三成は」

「まったく……どうして僕がこんな……」

「政宗様、ここはこの小十郎めが!」

「任せたぜ、小十郎!」

「うぉおぉう!政宗殿ぉぅっ?!」

「わー、旦那!溶けるっ、折角作った雪玉溶けるからー!」

「ヒヒッ、やはりコタツは暖かいのぅ」

なんだ、このカオス。

わかってたけど、こいつら本当に自由人だな。

っていうか、約一名普通に参加せず部屋の中でぬくぬくしてるやついるけど。おい。



『ふふっ、菊ちゃん!楽しいですねっ』

「っ!」

満面の笑みでアタシの手を握ってくれた夢子お嬢が本当に可愛かった。

だから、もういいや。

超幸せです、アタシ。



「夢子ちゃん、ほらほらどんどん雪玉作って!」

『は、はい!慶次さんっ』

「菊一もボーっとしてはいけませんよ。ふふふ。というか、仔羊、菊一の手ではなく、私の手を握りなさい」

「変態殺す」

「わーっ!菊一、変た……否、明智は仲間だって、おいー?!」

「うるせー、エロ親、もうみんなアタシの敵だボケェ」

「……ヒヒヒ、愉快ユカイ」

取り敢えず、お茶を啜っていた大谷吉継には、足を滑らせたのかよくわからんが、巨大雪だるま化していた黒田を投げておいた。
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