消失

「自分が死ぬ瞬間の事を思うと、それがどんなに幸せな死に様でも心臓が冷えるんだ」

 死神の冷たいその手に掴まれたような、そんな感覚に襲われる。

「例えば?」

 よく分からない、とでも言いたげに、キラー屋はおれにそう訊ねた。

「例えば……キラー屋に看取られて死ねたら幸せだ、間違いなく」
「それでも恐いのか?」
「ああ、そうだ」

 死んだ時にはどうなるのか。
 思い出や記憶のすべてが消えるのだろうか。
 何か残ることを望んでも、それが叶うことはないのだろうか。

 おれは結局、何もかもが消えてしまうのを怖れている。

「キラー屋は怖くないのか?」
「おれは……」

 キラー屋は、明言するのを避けたがるようにうつむいたが、その後すぐに顔をあげ、おれに向かってこう言った。

「おれも、怖いとは思う。ただ、理由は多分違う」
「何でそう思うんだ……?」
「いっそ、何もかも消えるならそれが良いんだ……でもお前は違うんだろう?」

 キラー屋の返答は、おれを悩ませるのに十分すぎる内容だった。
 稀少な例を除いてしまえば、死が存在の消失であるのはほぼ確実なのだから。
 消失しない事を怖れるなんて珍しい。

「……独りになりたくないんだ」

 そうつぶやいたキラー屋の真意が解らず、おれは首をかしげた。

「つまり……?」
「キッドもお前も、多分悪魔に連れて行かれてしまう」

 悪魔。能力者なら必ず一体身に宿す……と、言われ信じられている存在だ。
 非現実的だ。
 でも一般からすれば能力からして非現実的なのだから、ある意味では現実的だ。

「寂しい思いはもう嫌なんだ」

 「自分が死ぬ瞬間の事を思うと、それがどんなに幸せな死に様でも心臓が冷えるんだ」

 死神の冷たいその手に掴まれたような、そんな感覚に襲われる。

「例えば?」

 よく分からない、とでも言いたげに、キラー屋はおれにそう訊ねた。

「例えば……キラー屋に看取られて死ねたら幸せだ、間違いなく」
「それでも恐いのか?」
「ああ、そうだ」

 死んだ時にはどうなるのか。
 思い出や記憶のすべてが消えるのだろうか。
 何か残ることを望んでも、それが叶うことはないのだろうか。

 おれは結局、何もかもが消えてしまうのを怖れている。

「キラー屋は怖くないのか?」
「おれは……」

 キラー屋は、明言するのを避けたがるようにうつむいたが、その後すぐに顔をあげ、おれに向かってこう言った。

「おれも、怖いとは思う。ただ、理由は多分違う」
「何でそう思うんだ……?」
「いっそ、何もかも消えるならそれが良いんだ……でもお前は違うんだろう?」

 キラー屋の返答は、おれを悩ませるのに十分すぎる内容だった。
 稀少な例を除いてしまえば、死が存在の消失であるのはほぼ確実なのだから。
 消失しない事を怖れるなんて珍しい。

「正確に言えば、独りになりたくないんだ」
「つまり……?」
「つまり……キッドもお前も、多分悪魔に連れて行かれてしまうだろう?」

 悪魔。能力者なら必ず一体身に宿す……と、言われ信じられている存在だ。
 非現実的だ。でも一般からすれば能力からして非現実的なのだから、ある意味で信憑性が果てしない。

「……そうなったらキラー屋は寂しいのか?」
「寂しい思いはもう御免なんだ」

 おれは、キラー屋がかつて感じた寂しさを知らない。
 そのため、ただ黙っている事しかできなかった。

「だから、死んだら消えてしまいたい」

 キラー屋は呟くようにそう言ってから、またもう一度うつむいた。



「だから、死んだら消えてしまいたい」

 キラー屋は呟くようにそう言ってから、またもう一度うつむいた。



【あとがき】
単独行動は好きだけど寂しがり屋なキラーとか萌える。




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