甘々小説

小説書きさんにCP5の試練 より
『二人のどちらかが出てこない甘々小説』
を書いてみました。

※ローが誰かと付き合ってるの前提です。相手は想像にお任せ。


「あいつの欠点はな、色々世話焼いてくるところだ」

 ローに恋人の欠点を聞かれたキッドは、そう答えた。

「欠点なのか、それ」
「おう、朝出かける時だけならともかく、帰ってからも世話焼いてくるからな」
「例えば?」

 ローはイマイチ納得いかない様子でそう聞いた。キッドがそれに答える。

「朝はな、朝飯作ってくれるのはありがてェんだが、早めに起きろだの、持ち物全部持ったかだの、お前はおれの母親かってくらい世話焼いて来るんだよな」
「ああ……」

 確かにそれは面倒かもしれない、とローは少し納得した。キッドがさらに続ける。

「で、帰ってからは、夕飯作って待ってるんだよな。あいつの方が仕事場近いからって」
「ウチはお互い買って帰る感じだな……」

 別段ドライというわけじゃないが、ローと恋人はお互いのために手料理を作るタイプではない。外に食べに行くことはたまにあるが、基本はコンビニで買った物か冷凍食品だ。
 キッドがあきれたように言う。

「体に悪そうだなオイ……」
「うるさいな。そういうユースタス屋は作るのか?」

 ローの問いに、キッドは少し自慢げに答えた。

「休みの日はおれが作ってるぜ、朝飯から夕飯まで」
「意外だな」
「よく言われる。ま、それは置いといてだ。夕飯食う時もちょうど良いタイミングで醤油やらソースやら渡してくるんだよ。そこまで気遣われると逆に気になるよな?」
「そうか? 別にいいだろ、それくらい」
「そんなもんか……?」

 キッドが不満気にそう返すと、ローは苦笑しながら言った。

「ユースタス屋も心配性だよな、なんだかんだで」
「あいつのこと好きだしな」

 一切の照れもなく言い切る辺りは実に男らしい。

「……こっちが照れるレベルだな」
「なんだよソレ。まァいい……で、夜寝る前も歯を磨き忘れてないかだの、明日も仕事だから早く寝ろだの、やっぱ世話焼いてくるんだよな。次の日休みだと遅くまで付き合ってくれんだけどな」
「遅くまで、か」
「……何考えたかはしらねェが、基本酒飲むだけだ。でもそん時も酒の量気にしたり、寝そうになるとベッドまで誘導したり、やっぱ世話焼いてくるんだよ」
「献身的で羨ましいな、ウチだとソファーで寝始めるぞ」

 そして、最終的にローがベッドまで運ぶ羽目になる。

「おれはそれくらい適当な方がいいがな……あいつが気遣い過ぎて早死にすんじゃないかと気が気じゃねェし」
「ユースタス屋も心配しすぎだろ」

 こうして聞いているローからすると、お互い様な気がしてならなかった。

「あと、今日みたく飲んで帰る時も、おれが帰るまで起きて待ってるんだよな。今日は寝ろってメールしたからさすがに寝てると思うが……」
「起きてたりしてな」
「これで起きてたらさすがに怒るぞ」
「それはそれで可哀想だろ」

 そわそわし出すキッドをからかうようにローはそう言った。

「黙れよ。とにかく、お前もしばらく付き合えばわかるぜ、アイツはこっちが心配になるレベルで気遣ってくる。付き合わせる気はねェけど」
「おれも恋人いるしその気はない。安心しろ」

 気遣いとは無縁なタイプだが、ローにとっては大切な相手だ。
 と、キッドが店の時計を見て言った。

「……あいつの話してたら心配になってきたから帰るぜ、悪ぃな。また今度埋め合わせする」
「別に良い、おれもこれ飲んだら帰るしな」
「ならいいけどよ……じゃあな」

 飲み放題だと言うのに、結局三杯でキッドは帰って行った。この間の二杯に比べればもった方だな、とローは呆れたように息を吐く。

「欠点じゃなくノロケ話しかしてないじゃないか、あのチューリップ」

 ローはそう悪態をつくと、手元の酒を飲み干した。




良いなと思った方は是非→ 拍手


リストへ戻る
TOPへ戻る
[ 25/37 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -