ラブラブに挑戦

小説書きさんにCP5の試練 より
1.「好き」「愛してる」を使わないでラブラブ
を書いてみました。


「こうしてると安心する」

 キラーはキッドの背中にもたれ掛かりながらそう言った。言葉通り、安心感に満ちた声だった。
 しかしキッドは、背中合わせで座っているため様子が分からず、キラーにしては珍しい行動だったため、安心どころか不安になった。
 思わず疑問が口に出る。

「唐突だな。何かあったのかよ」
「……」

 返事はなく、沈黙のみが戻ってきた。呼吸はしてるが、起きているのか分からない。

「おい」

 キラーがもたれ掛かっているため、様子を伺うこともできない。下手に身体を動かすとキラーが落ちてしまいそうだった。
 キッドが色々と考えを巡らせていると、キラーはキッドの質問には答えず、ポツリと言った。

「ずっとこうしていたい位だ」
「やめろよ」

 不安に苛まれるのはごめんだ、と思い、キッドはキラーにそう返した。

「……ダメか」

 キラーはそう言ってから、一呼吸おいて身体を起こした。
 キッドは、なくなった重みに何か間違えたかと不安になり振り向いた。すると、背中を向けたまま、拗ねたようにキラーが言った。

「たまには、良いじゃないか」
「あ?」
「たまには甘えたくなる」

 キラーのその言葉に、どうやら深い意味はなかったのか、とキッドはホッとした。
 気が抜けると、心配させられた事に対する軽い怒りがキッドの中にわいてきた。

「寄りかかるなとは言ってねェだろ」

 キッドはそう言って身体ごと後ろに向き直り、そのままキラーを抱き寄せた。
 キラーが狼狽しながら言葉を紡ぐ。

「こういう事じゃ、なくてだな……!」
「何のことかわからねェな」

 照れているのか逃れようとするキラー。それを抱きしめて抑えながらキッドが言うと、キラーは諦めたのかおとなしくなった。
 照れながら、やや不服そうな様子でキラーがキッドに訊く。

「何で背中合わせじゃダメなんだ……?」
「お前と同じ方見てたいからだ」
「……そうか」

 キラーは、納得したのか諦めたのかは分からないが、そう言ってキッドの胸にもたれ掛かった。
 預けられた体重を支えながらキッドが言う。

「背中合わせは戦う時だけで十分だ」
「……お前が言うなら、そうに違いない」

 そう返したキラーの声はもう落ち着いていて、背中合わせの時と同じように安心感に満ちていた。

「ずっとこうしていても良いか?」
「いいぜ」
「ありがとう」

 身体をくすぐるキラーの髪から伝わる温度のおかげで、キッドの不安は解消された。
 しばらくそうしていると、キラーが言った。

「実はな……夢をみたんだ」
「どんな夢だ?」
「お前が、おれの目の前で消えてしまう夢だ」

 どうやら『何かあったか』に対する答えらしい、とキッドは思い至る。

「そりゃ悪夢だな」
「ああ。そのせいで、離れているのが不安になったんだ」
「なるほどな」

 同じ夢を見たら、自分もとりあえず近くにいようとするだろうな、とキッドは思った。

「そういうわけだから、今日は離れないぞ」
「おう」

 さすがにずっとくっ付いているわけにもいかなかったが、キラーは言葉通りキッドに付きっきりで一日を過ごした。
 しかし、夢の話がただの照れ隠しだったとキッドが知る事は最後までなかった。




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