※なんかよくわからない話。
※「マスクつけてる理由妄想〜ホラー編」みたいな内容です。



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 初めは小さな音だった。
 気のせいだと思うような、そんな程度の。

 それがだんだんと明瞭に聞こえるようになり、今では耳元で聞こえる。
 音源がそこに無い以上、あり得ない話なのだが。

 それをキッドに話すと、怪訝そうな顔でこう返した。

「それで、何の音なんだよ」
「鈴の音だ。十秒に一回」

 一定のタイミングで同じ音を聞き続けているのは一種の拷問に近い。
 たしか実際似たようなものがあって、下手をすると気が狂うのだとか。

 それでもそうならない理由は、とりあえず右耳をふさげば音が聞こえなくなるからだ。

「こうして塞ぐと聞こえなくなる」

 そう説明すると、キッドは疑うような表情で言った。

「軽く押さえてるだけじゃねェか」
「それでもだ」

 だがこれはこれで腕がつかれるし、何より常にやっているわけにもいかない。
 どうにかならないかと耳栓をつけてみたが、効果は無かった。

 どうやら耳全体を覆わなければいけないらしい。
 つまり、実際のところは打つ手がないのだ。

 おれは耳から手を離して言った。

「どうしたら良いだろうか……原因もわからないし」
「どうって言ってもなァ……」

 キッドがそう言って腕を組む。
 しばらく沈黙が続き、鈴が十五回程鳴ったところでキッドが椅子から立ち上がった。

「そうだ、アレはどうだ……ちょっと待ってろ」

 そう言って部屋をでたキッドが戻ってきたのは、鈴が六十回鳴った時だった。
 戻ってきたキッドの手には、フルフェイスのマスクがあった。

「マスクか……」
「これなら耳はふさがるだろ」
「耳どころか目まで塞がりそうなんだが」

 見る限り、視界が悪そうなマスクだった。
 本当に役に立つのかと不安ではあるが、ものは試しだ。

 キッドからマスクを受け取って被ると、確かに鈴の音は聞こえなくなった。

「原因確かめるよりは早いだろ」
「……そうだな」

 案外視界も悪くないし、こうしているのが良いのだろう。
 おれはそう自分を納得させて、この状況を受け入れることにした。




 未だに、マスクを外すとその音が聞こえる。





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