独占欲強いキラーネタ

※キッド大好きすぎるキラー


 近頃のキラーは前よりも自己主張が激しくなってきている気がする。

 おれが船から出ようとすれば必ず付いてくる……のは良いんだが、他の船員が近づくと不機嫌そうにするからアイツらも気を遣って遠巻きになる。
 酒場にも付いてきて、自分は飲まずにおれの隣で酌をしてくる。結果、おれは実質キラーと二人で酒場に来ているような状態になる。他の船員は同様に気を遣って少し離れた位置だ。

 前は他の船員がいようが気にしなかったし、酒場なんて付いてくることすら稀だった。
 こうなったきっかけは分かりきっている。
 前の島に着いた時、色々合っておれとキラーは船員も認める恋人同士になった。そこからキラーはこうなったから、きっかけは間違いなくそれだ。

「……」
「どうしたんだ? キッド」

 どうしたものかと黙り込んでいると、キラーが心配そうに声をかけてきた。いや、声はずっと掛けてきてたんだが。
 というか実質無視されてたのに話しかける精神力がすごいと思うと同時に、悪い事したな、とおれはキラーを撫でた。
 嬉しそうにするキラーに質問の答えを返す。

「最近のお前と……あと、おれとアイツらとの距離感について考えてた」
「……」

 船員のことについて口に出すと、キラーは案の定不機嫌になった。だが、もう一度撫でてやるとまたすぐに機嫌が良くなった。
 おれより年上なのにこれは問題あるんじゃないだろうか。いや、これ以外は知識もあるし強いしで何の問題もないんだが。

「キッド、おれが居るんだから良いじゃないか」
「でもな……おれは一応船長だろ? あんまり船員と距離置くもんじゃねェ」
「……そうだが……」

 キラーが納得しつつも不満そうにおれのコートを握る。
 コイツだけに構う以外にどう扱うのが正解なのか、いまだに答えが見えない。

「キッド、おれはお前の一番だよな?」
「おう、一番信頼できる船員で、恋人だ」
「……わかった、我慢する。……アイツらの方行ってきて、良いぞ」

 もの凄く名残惜しそうにそう言って、キラーが席を立った。

「おれは先に帰ってるな」
「……おう」

 落ち込んだ様子で立ち去ろうとするキラーを見て、おれは自分から言い出したくせに思わずキラーの手を掴んでいた。

「やっぱり良い。ここに居ろよ」
「……良いのか?」
「ああ、おれの傍に居ろ」

 おれがそう答えると、キラーは嬉しそうにおれの隣に座り直した。

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 何やかんやでまた二人の空間を作っているキッドとキラーを見ながら、船員の一人がぼやく。

「まーたやってるよ……」
「おれ達の事は気にしなくて良いのになぁ、頭も」
「そうそう、あの方が他のヤツも絡んでこねぇし、平和だよな」

 実際、キッドから離れようとしない上やたらとテンションの高いキラーは、事情を知らない人間は近づきづらいものがあった。
 いや、事情を知っている船員ですら近づきがたい。

「本当にキラーは頭好きだよなー」
「だなぁ、頭も頭でキラーにちょっかい出すとキレるしな」
「バカップルってやつかぁ?」

 そんな会話をしながら、船員たちは今日も平和に酒を楽しんでいた。




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