キドキラ

※独占欲強すぎて壊れたキラー
※無理心中



 最初はただ何となく嫌だった。それだけだった。
 それだって、キッドが他人と話してるとイライラする程度で、我慢はできた。

 でも、それも段々悪化して来て、次は船員と話してるだけで、その次はキッドの意識が何かに向いているだけで、その次は、次は、次……もう限界だった。

 キッドの心が『海賊王』にとらわれていることが我慢できなくなったとき、おれの中で何かが切れた。
 それが理性だったのか、『おれ』の息の根だったのかは分からないが。


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「やってしまったな」

 他人事のようにつぶやきながら、おれはだいぶ冷たくなったキッドの手を握った。
 そうしなければ、まるでキッドを殺す為に、裏切るために近づいたように、自分自身で錯覚してしまいそうだった。
 ただ、もしそうなら、嬉しさだけで苦しさなんて無かったんだろう。

「……お前だって悪いんだぞ、キッド」
「おれが辛いのに、それに気づいてくれなかったから」

 我ながら自分勝手だ。

「少しだけ気にかけてくれれば、普通の嫉妬で済んだかもしれないのに」

 本当はそんなことはなかっただろうが。

「お前はおれと出会わなければよかったんだ、多分」

 本当はそんなの嫌だ。
 もっと何かあったんじゃないか。

「何も殺す事無かったのにな……おれはダメなヤツだな、キッド」

 そう言いながら抱き着いたキッドの身体は、もう体温を奪われそうなくらいまで冷えていた。
 どれくらい時間がたったんだろうか。どうでもいいか。

「おれも此処で死ぬから、許してくれるよな?」

 船員が探しに来る前に死なないと、それも出来なくなってしまう。
 おれは、マスクを外してからキッドの懐の銃を抜き取り、その銃口を頭に当てた。

「それじゃあ、地獄で会ったらまたよろしくな、キッド」

 おれはキッドにそう声をかけて、引き金に力を込めた。




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