美人なキラーネタ
※拍手コメでいただいた例のあれです
※タイトル通り、キラーが美人(♂)っていう設定です
キッドは、キラーがマスクを取ったところを実は見たことが無かった。
船員のほとんどが、「頭なら見たことあるだろう」と考えたいたが、実はそんなことはない。
いや、正確に言えばある時点までは知っているのだが、マスクをかぶりはじめた時期以降は知らないという事だ。
子供のころに知り合ったのだが、諸事情で離れてからは手紙か電伝虫によるやり取りのみになった。
それでも交流は途絶えず、海賊になる折にキラーを誘って久しぶりに会ったら彼はあのマスクをかぶっていた。
理由は単純なもので、「親の立場を考えると顔は晒せない」ということだった。
当の親はさほど気にしていないようだったが、「傷もつかないし良いと思う」などと母親が言っていた。
――傷くらいなら良いだろ、男だし。
キッドはそう考えたのだが、何か理由があるのかもしれないとも思った。
というのも、キラーの親は子煩悩だの過保護だのといったタイプではなかったからだ。
よくよく考えると、顔自体は幼少期からそれなりに整ってはいたような覚えがキッドにはあった。
「……聞いてみるか」
「何をだ?」
キッドのつぶやきに、いつの間にやらそばに居たキラーがそう尋ねた。
「! いや、お前の素顔。見てねェなと思って」
キラーはやたらと徹底していて、船員以外は居ない航海中ですらマスクを外さ無かった。
例外は風呂に入るときだけらしいが、それも一人で入っているため誰も見たことがない。
寝るときに忍び込んだ船員も居たが、就寝用のマスク(金具がない物)を着けたまま寝ていたそうだ。
「そう言えばそうだな……」
「だろ?」
「気になるか?」
「気になるな。おれだけ成長した顔見せるのも不公平だろ、よく考えたら」
後付けの理由ではあったが、キラーを説得するためだから仕方ない、とキッドはキラーにそう言った。
「それもそうだな、じゃあお前の部屋でなら良いぞ」
「おう。じゃあ来いよ」
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部屋に着くと、キラーは部屋の鍵をかけた。
「念入りだな」
「まあな……うっかりしたりしたら、今までの苦労が水の泡だ」
苦労。食事制限やら息苦しさやら視界の狭さに関してだろうなとキッドは今までのことを振り返りそう考えた。
「じゃあ外せよ」
「ああ」
キッドに促され、キラーはマスクを外した。
「……」
「……キッド?」
晒された顔をみて何も言わずに呆けるキッドに、キラーが声をかける。
「その……何か変な痕とかついてたか?」
「いや、そう言うんじゃねェけど……」
気まずそうに俯くキラーにキッドがそう言うと、キラーは怪訝そうな顔をした。
「じゃあやっぱり顔の事か……?」
「まあ、そうだな」
キッドがそう答えると、キラーは落ち込んだ様子で言った。
「やっぱり、頼りなさげだよな……おれの顔は……」
「それは別にいい。お前は強いし問題ねェ。ただその、こう言って良いのかわかんねェけど……美人だな」
「ッ……お前に言われるとは、思ってなかった……」
キッドの言葉に、キラーは照れた顔を隠すようにマスクをかぶり直した。
「キッド良いか、今のはナシだ。忘れろ。わかったか?」
「何でだよ?」
「恥ずかしい……」
キッドに忘れろといった調子から一転、キラーは消え入りそうな声でそう言った。
まあ確かに、幼馴染に今更美人などと言われたら恥ずかしいのも頷ける。
だが、キッドは容赦しなかった。
「美人なもんは美人なんだから良いだろ」
「うぅ……やっぱり隠しておけばよかった……」
「そうだな、おれ以外には見せんじゃねェぞ」
キッドの言葉にキラーが頷く。元々そんな気もないのだろう。
なぜかは判らなかったが、キッドは自分以外の人間にキラーの顔を知られたくないと思った。
友人の身を案じて、というもっともらしい理由もつけられるだろうが、そういう事ではなかった。
何だろうかと考えて、キッドはある考えに思い至った。
「そういうことか……」
「?」
「多分、だがな……お前に惚れた」
キッドの発言にキラーがきょとんとする。
「……今なのか? 今まで何年も付き合いがあって?」
「そりゃ今までの事もあるけどよ……っていうか、そこかよ」
突然告白されたことではなく、何で今なのかを訊かれるとはキッドも思っていなかった。
「おれは……前からだからな」
どうせ顔は見えないのに、照れた顔を隠すかのように俯きながらキラーが言った。
なんとなく気まずいようなそわそわとした空気がしばらく続いたが、ともあれその日から二人の関係が友人から恋人に昇格したとかしなかったとか。
<おわり>
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