012


※エイプリルフールが普通にある体で。



「キッド、話があるんだ」
「あ?」

 やけに真剣な声で呼び止められキッドが振り向くと、声の主のキラーは目を合わせたくないかのように俯いた。
 その挙動に、キッドは「ああ、そう言えば今日はエイプリルフールか」と思い出す。
 無意識なのだろうが、キラーは嘘をつくときは相手の方を見ない。
 顔が隠れているから表情から悟られることも無いだろうに、不思議な癖だとキッドは思っていた。

「話ってなんだよ?」

 嘘をつかれるとわかっていて聞くのも変な感じだとは思ったが、キッドはそう聞いた。

「ここではちょっと話しづらい……」
「そうか、なら場所変えようぜ」

 これは良くある船を降りるだのそういうヤツか、と思いながらもキッドがそう提案するとキラーも頷いた。

「よし、とりあえずおれの部屋に来い」
「あ、ああ」

 キラーが緊張したようにそう返す。
 そこまで緊張するならもっと軽い嘘にしとけよと考えつつ、キッドはキラーの前を歩きはじめた。

 部屋についてドアを閉めると、キラーはキッドの顔を見ながら言った。

「その……突然こんな事言うのもどうかとは思ったんだが……」
「おう」
「……お前の事が好きなんだ」

 想定外の言葉に、キッドの思考が一時停止した。
 何も言わないキッドにキラーが顔をそらしながら言う。

「……なんてな、嘘だ、今日はエイプリルフールだろう?」

 少し震えた声でそういうキラーの言葉で、キッドは冷静さを取り戻す。
 キラーはドアノブに手をかけながら言葉を続ける。

「だから、忘れてくれ」
「っ――待てよ!」

 キッドはそう言って、部屋を出ようとするキラーの肩を掴んだ。
 キラーが振り返ると、キッドはキラーが逃げられないようドアの横の壁に抑えつけた。

「嘘ってのがウソなんだろ?」
「……だとしたら?」
「喜んで受け入れる」

 キッドがそう言うと、キラーは戸惑ったようにこう返した。

「それは、嘘……じゃないんだよな?」
「ああ」

 キッドがそう返すと、キラーはキッドのコートをつかみながら言った。

「……今日なら、ダメそうならウソにしてしまえば良いだろう、って思ったんだ」
「おう」
「でも、ダメだと思ったら……随分と分かりやすい挙動をとってしまった」

 キラーが照れた様子でそう言うと、キッドは抑えてつけていた手を放してキラーを抱きしめた。

「女々しい事しやがって」
「……すまない」
「まァ、今日くらいは許してやるよ」

 キッドがそう言ってキラーの髪をなでると、キラーもキッドの背に腕を回し、抱き合う形になった。
 キラーが不安そうに言う。

「嘘だっていうなら、今がチャンスだぞ?」
「必要ねェよ、お前が傷つくような嘘は言わねェからな」
「そうか」

 安心したようにキラーがそう言うと、キッドはキラーのマスクの額あたりに「マスクが邪魔だな」と思いながら軽い口づけを落とした。



【後書き】

今日中って言ったな……ギリギリだったが嘘はつかずに済んだぜ
(日記参照)

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