003


 うっかり、甲板の手すりから飛び出た木のささくれで指を傷つけてしまった。
 ささくれが大きかったためか、それなりに血が出ていた。

 反射的に舐めると、血の味が舌の上に広がった。

「参ったな……」

 武器は装着型だからいいが、利き手の人差し指が痛いというのは、困る。

「おい。どうした、キラー」
「ああ、キッド。少し指を切ってしまったんだ」
「んだと? 見せろ」

 そう言って、キッドがおれの手を取った。

「だいぶ切れてんじゃねェか」
「ああ、だから医務室に行こうかと」
「医務室……あいつ、今いねェぞ」

 キッドが言っているあいつというのは、多分船医だろう。

「大丈夫だ、これくらいなら自分で……」
「利き手はやり辛ェだろ。やってやるよ」

 そう言って、キッドがおれのケガをしていない方の手を掴んだ。

「行くぞ」



 医務室に着いたが、キッドが言った通り、船医は居なかった。

「ほら、手出せ」
「ん」

 キッドが引き出しから消毒液を取り出し、脱脂綿にしみ込ませ傷口に……と、その前で手を止めた。

「傷にとげ残ってないか見てねェな、そういや」

 そう言って、キッドがおれの手を引き寄せて、傷口を確かめはじめた。
 何故だか、緊張して身体に力が入ってしまう。

「ないみたいだな」

 そう言って、キッドは消毒を再開した。

「っ……!」

 思った以上に、しみる。
 キッドは、こちらの様子を気に掛けつつ、消毒液を傷口に塗りたくっていた。

 しばらくして、消毒に満足したらしく、キッドはガーゼを指先に巻き付けた。

「テープどこだ……」
「上から二番目にあるはずだ」
「ここか……お、あった」

 テープを発見したキッドが、ガーゼの上から2、3箇所、テープを貼った。

「よし」
「ありがとう」

 そう言って、手を引っ込めようとしたが、キッドが手を離してくれず、おれは困惑した。

「キッド……?」
「……なぁ、キラー」
「ん?」

「血見たら……その、なんつうか……」

 じっと見てくるキッドの目は、まるで肉食獣だった。

『食われる……』

 いやな予感が胸をよぎり、おれはキッドの言葉を聞く前に手を振りほどき、医務室から逃げ出した。

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