ペンキラ


 久々の再会だった。

 ペンギンとキラーは所属する海賊団が違うため、普段は通話か手紙くらいしか接点がない。
 それが今回、ようやくこの島で合流できる。

 直接会える機会は貴重なため、ペンギンは雪が降る中、喜び勇んで待ち合わせ場所へと向かった。

 だが、待ち合わせ場所に着いたとき、彼は喜びを表すより先に呆気にとられてしまった。
 キラーの居る場所があまりに奇妙だったためである。

「……何してんの」
「ああ、ペンギン……これは、その、寒さに耐え兼ねて……風雪避けというか」

 少し焦った様子でそう言ったキラーは、路地裏に捨てられた箱を、それに身体を収めるようにかぶっていた。
 何とも間の抜けているその姿に、ペンギンは込み上げる笑いをこらえながらキラーに訊いた。

「おれらの船来るか? 潜水艦だから風入らないし」
「ああ、そうする」

 首を縦に動かして、キラーは即座にそう答えた。

「……よっぽど寒かったんだな」

 キラーがハートの海賊団の船へ行くことは滅多にない。
 新しく入った船員に警戒されるのが面倒、というのがだいたいの理由だ。

 だが、耐えかねる寒さがそれを考える余裕をキラーから奪ったらしい。

「じゃあ行こう」
「ああ」

 箱からキラーを引き出そうとペンギンがその手を掴む。
 と、キラーの手はかなり冷たくなっていて、ペンギンはびっくりした。

「大丈夫か? 手、すごい冷たいぞ」
「寒いからな……お前はなんでこんな温かいんだ」
「まぁ、寒さには慣れてるからなぁ」

 ペンギンはそう答えたが、実際はこれからキラーを船に招くという状況に緊張したせいだった。



 船に着くと、ペンギンはローに事情を話して、キラーを自分の部屋に連れていった。
 ペンギンに促されてベッドに腰掛けながら、キラーは訊いた。

「……いまさらだが、良かったのか」
「大丈夫だって、どうせあいつしばらく帰って来ないし」

 ペンギンも隣に座りつつそう答えた。
 同室のシャチは、積もった雪にテンションを上げて、ベポと一緒に遊びに行っている。
 夕方まで帰って来ないはずだ、とペンギンはふんでいた。

「だからさ……ほら、暖めてやるから……こいよ」

 そう言って、ペンギンは両手を軽く広げた。
 キラーはその申し出に応じてペンギンの腕におさまり、そのまま彼の胴に腕をまわした。

「やっぱ身体冷えてるなぁ……ごめんな、あんなところで待たせて」
「構わない。この島じゃどこも同じだろう」

 事実、キラーはここについてから、最初と今回以外はあまり外に出ていなかった。
 ほかの船員も同じような状態で、買い出しは罰ゲーム状態だ。

「そうだ、何か温かいもの持ってこようか」

 未だに身体が冷えたままのキラーに、ペンギンはそう訊いた。

「いらない…それよりも、ここに居て欲しい」

 そう言いながら、腕に軽く力を込めるキラーに、ペンギンは「珍しいな」と思った。
 いつも会うときは、お互いの立場上どうしても少し距離感がある。
 そのため、ペンギンはこんなキラーを見るのは初めてだった。

「……可愛いなぁ」

 ペンギンは思わず口に出していた。
 言ってから、まずかったかな、とペンギンは思ったが、キラーは特に怒ることなく返した。

「そうか? まぁ、お前がそう思うならそれでいい」

 そう自己完結してから、キラーは顔を軽く伏せて言った。

「なんだか、寒いのも悪くはないな」
「……! そうだな、おれも好きだよ、寒いの」

たどたどしく返事をしながら、ペンギンは顔を赤くし嬉しそうにそう返した。



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2周年企画のリクエストです!
【甘々、寒さに弱いキラー、雪】というお題でした。

ペンキラはあんまりお互いに甘えたりしそうにないので、こういうときくらい素直になれやー!
という気持ちで書きました。

シャチはこの後帰ってきたけど、気を利かせたローが呼びとめて、ベポと3人で談話したとかなんとか。

それでは、
名無しさんリクエストありがとうございました!

良いなと思った方は是非→ 拍手

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