キドキラ


 キラーが甲板で壁を背もたれに本を読んでいると、頭上から声をかけられた。
 本を膝の上に置いて見上げると、キッドがぬいぐるみを2つ持って立っていた。

「……どうした、それは」
「もらった。どっちかいるか?」

 そう言ってしゃがんだキッドの手にあったのは、兎と虎をかたどった少し大きめのぬいぐるみで、
どちらもくたっとしたやわらかそうなものだった。

「もらっていいのか?」
「2つあんだから当たり前だろ」
「そうか。じゃあ虎の方を」
「おう、ほらよ」

 キッドは少しばかり嬉しそうな表情でキラーに虎のぬいぐるみを差し出した。

 なぜ嬉しそうなのかといえば、キッドがこう見えて兎好きだからだ。
 もちろん、キラーもそれをわかっていて、虎を選んだ。

 キッドからぬいぐるみを受け取りつつキラーは訊いた。

「で、だれからもらったんだ?」
「ああ、酒買ったらくじ引かされてよ、それでだ」

 キッドはキラーの目の前に座りながらそう答え、兎のぬいぐるみを自分の横に置いた。

「景品がぬいぐるみとか、変わった店だな」
「他もパズルとかそんなモンだったからな……予算の問題じゃねェか、多分」
「なるほどな」

 キラーはそう相槌をうってから、本の上に乗せたぬいぐるみを眺めてつぶやいた。

「これだとベッドくらいしか置き場がないな」

 もちろん、サイズ的な問題もある。
 が、見える場所に飾っておいて出所を知らない船員にからかわれる事の方がキラーにとっては問題だった。
 その点、ベッドなら布団の中にかくしておけばまずバレない。

「キッド、お前はどこにする?」
「おれもベッドにするぜ、代わりに置くのに丁度良いしな」

 キッドがそう言ったとき、キラーは一応意図を理解していたが、出来心でキッドをからかってみることにした。

「代わりって何の事だ?」
「そりゃあ、その……やっぱ教えねェ!」

 キッドはそういうと、傍らのぬいぐるみを片腕に抱えて立ち上がった。

「顔が赤いぞ、キッド」
「うるせェよ。ってかお前、絶対わかってんだろ」
「さあ、どうだろう……お前はどう思う『キッド』」

 キラーは自分のぬいぐるみを持ち上げ見つめながらそう言った。

「お前、やっぱわかってんだろ!?」

 キッドは照れと憤りで顔を赤くしながら、キラーに向かってそう叫んだ。
 その大声で、数人の船員が「またやってるよ」とでも言いたげに二人を見た。
 その呆れたような視線を感じつつ、キラーはキッドの方を見上げて答えた。

「とりあえず、おれは添い寝するなら本物の方がいいけどな」
「……キラーお前、後で覚えてろよ」

 キッドはそう言ってキラーの頭を小突くと、ぬいぐるみを持って自分の部屋へと戻っていった。



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2周年企画のリクエストです!
【虎、兎】というお題でした。

動物2匹ということで、ぬいぐるみに絡めてみました。
とりあえず、億超えてるような海賊二人がぬいぐるみとか大事に持ってたら
ギャップ萌えで死ねる気がします。

あと、頭がいつもより可愛い感じですが、キドキラです。
特にこの日の夜、キラーはキッドにたっぷり仕返しされたと思います。

それでは、
名無しさんリクエストありがとうございました!

良いなと思った方は是非→ 拍手

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