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「それ、残るんだよな?」

 キッドが、ラーメンの具であるチャーシューを指差しながらキラーに訊いた。
 まだ麺を口に含んでいたため、キラーは頷いて返した。

「じゃあもらうぜ」

 そう言って、キッドは返事は待たずにチャーシューを指先でつまんだ。
 キラーは麺を飲み込んでから、キッドをたしなめるように言った。

「手で持つのは行儀が悪いぞ」
「箸は苦手なんだよ。仕方ねぇだろ」
「まったく……」

 呆れたように言うと、キラーは最後の一本を箸でつかんだ。

「……いつ見ても器用なモンだな」
「お前も練習すれば大丈夫だ」

 キラーの返答に、キッドは眉をひそめた。

「マスクつけろってのか?」
「いや……おれが言ってるのは箸のことだ」

 苦笑まじりにそういうと、キラーは麺を口まで運んだ。

「どうなってんだ、ソレ」
「……」
「案外すぐ口なのか?」

 キッドの問いに、キラーは一瞬考えてから頷いた。
 そして、麺を飲み込んでから補足した。

「話すのに支障が無い程度には、間が離れているけどな」
「コレくらいか」

 キッドが自分の手を顔に近づけてそう訊いた。

「そんな感じだ」
「あぁ、なるほどな……ところで、スープはどうすんだ」
「……飲みたいなら飲んで構わない」

 一瞬、だいぶ冷めているからストローで飲もうか、と思ったキラーだったが、さすがに船外でやるのは恥ずかしかった。
 酒すら船外では奇異の目に晒されるためあまり飲まないのだ。

「ならもらう」

 そう言って、キッドは器を引き寄せた。
 そしてスープを飲んだ後、「お前の好きそうな味だ」と呟いた。





【後書き】
キラーの場合、箸使えなかったら麺類食べられないなと思って。
フォークで一本ずつは無理……だよね?
とりあえず、箸つかうキラーと、
キラーが物理的にたべられない分をつまみ食いするキッドを書きたかった。

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