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「キッドなんて大嫌いだ」
「おれも大嫌いだ。二人きりの時にお前の顔なんてみたくねェ」
「言われなくても、お前に見せる気なんてない」
そう言ってから、キラーはマスクを外して机に置いた。
「抱きしめてもやらねェ」
「むしろこっちから願い下げだ」
「キラー、おれはお前のそういう生意気な所が嫌いなんだよ」
キッドは、キラーの腕をつかむとそのまま抱きよせ、さらに続けた。
「このまま付きまとわれるのは御免だぜ」
「おれもずっと一緒なんて嫌だ」
キッドの背中に腕をまわしながら言うと、キラーは「キスなんてするなよ」と言って目を閉じた。
「絶対にしねェよ」
その後の唇を重ねたことによる暫しの沈黙が終わると、キッドが言った。
「……なぁ、ややこしいから止めようぜ」
「お前がやろうって言いだしたんじゃないか」
「うるせェ。いいからやめだ、やめ」
エイプリルフールらしく、嘘をつきながら話そうという事だったが、どうやらキッドはキラーから嫌いだと言われるのが不愉快だったらしい。
キラーもあまり良い気持ちはしなかったが、そういった趣旨自体は少し楽しんでいた。
こんな機会じゃなければ、キッドに嫌いなんて言う事は絶対無いのだから。
「……本当は、キッドの事が大好きだ」
「おれだって、本音を言えばお前の事好きだぜ」
「知ってる」
やっぱり、面白味はなくても嬉しい方がいいな、などと考えながら、キラーは再度目を閉じた。
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