ドレキラ 


※キラーがずっと素顔です。




 午後三時頃、キラーが昼寝から目を覚ますと、傍に置いたはずのマスクが行方不明になっていた。
 いくら探しても見つからなかったため、キラーは仕方なく素顔のままドレークの船へと向かうことにした。

 船へ向かう途中、通行人が奇妙物を見るような目でキラーの方をじろじろと見てきた。
 しかしキラーは、どうせ顔の傷のせいだろう、と結論付けて、それ以外の理由を考える事はしなかった。

 だが、キラーの顔を見たことのあるドレークや、彼の船の船員まで同じような反応をしたところで、ようやくキラーは別の理由があるのではないかと考えた。
 だが結局、顔を見てくるだけで誰も何も言ってこなかったので、キラーはドレークの部屋に着くと、単刀直入にこう訊いた。

「おれの顔、何かついてるか?」
「顔……というよりは頭だが……兎の耳がついている」
「!?」

 驚いた様子で、キラーは自分の頭に手を伸ばした。
 するとドレークの言葉通り、そこに有るはずのない物が手に触れた。

「思い当たる原因はないのか?」
「いや……全く無い」

 困惑した様子のキラーに、ドレークは部屋にある電伝虫の受話器を手にとりキラーに手渡してこう提案した。

「大方、昼寝から目を覚ましたらこうなっていたのだろう? ならば、船に連絡をして訊いてみるのが得策だ」
「ああ、ありがとう」

 キラーはドレークから受話器を受け取ると、海賊団に電話をかけた。


◇◇◇◇◇


 連絡した結果、キッドが面白半分で買ってきた薬を昼食に盛ったのが原因であり、キラー以外にも被害者は居て、ついさっきキッドが船員達から怒られたばかりである、という事が判明した。

『そういう事だから、お前も帰ったら殴っとけ。あと、マスクは取り返しといたから』
「ああ、そうだな……考えとく。あと、マスクは部屋に置いといてくれ」

 そう答えた後、キラーは受話器を電伝虫の上に置いた。
 すべてを横から聞いていたドレークが呆れたように言う。

「……理解出来んな」
「全くだ……あいつの悪ふざけはたまにワケが分からない」

 そう言って、キラーは疲れきった様にため息をついた。

「それで、殴りに帰るのか?」
「そうしたいのは山々だ……とはいえ、キッドに見られるのも何か癪だな……」

 悩んでいるらしいキラーの耳が、うつむいた頭に合わせるようにへたれる。
 気の毒になったドレークは、一つの提案をした。

「なら、今日はここに泊まって行くといい。明日には戻るようだしな」
「ここって、この部屋か?」
「ああ」

 今二人がいるのは、当然ながらドレークの自室、もとい寝室である。
 一応ソファーが有るとはいえ、あまり寝るのに適切ではないデザインであり、もし泊まるなら、カーペットの上で寝たほうが心地良さそうではあった。

「邪魔にならないだろうか?」
「いや、二人くらいなら、寝られるはずだ」

 そう言ってドレークが指し示したのは、ベッドだった。
 それは、キラーにとっては予想外だったし、床で寝るよりも邪魔だろうと考えたため、首を横に降りながら言った。

「いや、それは悪い。床でも寝られるから大丈夫だ」
「構わない。それに、床では不衛生だ」
「そうか……?」

 毎日念入りに掃除しているであろう、埃一つ見当たらないカーペットは、キラーから見ればとても清潔そうに見えた。
 ドレークは少し呆れたようにため息をつくと、キラーに言った。

「とにかく、邪魔になるとかそういった事は気にするな」
「……わかった」

 キラーの返事を聞くと、ドレークはキラーの頭を撫でながら言った。

「素直でよろしい」

 明らかに年下扱いされているのを感じ、キラーは少し微妙な気分になったが、悪気が無いのはわかっていたため、ドレークの好意を受け入れる事にした。
 それに、こんな機会は滅多にないと、キラーは考えていた。

「なぁ、ドレーク」
「何だ?」
「……少しは期待しても良いのか?」

 目を合わせずにキラーがそう訊くと、ドレークは少し思案してからこう答えた。

「持て成しは、しっかりとするつもりだが……夕飯が何か気になるのか?」
「え……あ、そうだ、夕飯だ……うん」

 キラーが耳をへたれさせながら気まずそうに相槌を打つと、それを見たドレークは何か間違ってしまった事を察した。

「……すまない」
「謝らないでくれ、ドレーク……余計に傷付く」

 恥ずかしそうに顔を逸らしながら小声でそう言った後、キラーは「風に当たってくる」と、言い残して部屋から出ていってしまった。

 後に残されたドレークは、しばらく考えてからキラーの真意に気付き、夕飯前にキラーが部屋に戻るまで、自らの鈍さに落ち込む事となった。



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彩頃さんより1周年企画のリクエストです!
【鈍感、うさぎ】というお題でしたが、
キラーにウサ耳生えようがドレークさんムラムラしなさそうだなと思ったんで、
結果、積極的になってみたけど空回りするキラーという展開になりました。

基本奥手な二人が可愛いと思うのです。

それでは彩頃さんリクエストありがとうございました!

良いなと思った方は是非→ 拍手

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