007


 机に突っ伏しながら、ローが呟いた。

「……クリスマスとか……本当に滅べばいい……」
「はいはい」

 面倒そうにペンギンが返すと、ローは何度目か分からないため息をついた。

 キラーがクリスマスにキッドと自宅デートをすると聞いてから、ローはずっとこの調子だった。
 クリスマスが終わるまでこれが続くのだから、その相手をするペンギンはたまったものではない。

「ってか良いじゃないですか、あの二人付き合ってるんだし、いつデートしたって」
「……いつデートしても良いなら……クリスマスくらいおれと遊んでくれたって良いじゃないか……キラー屋ぁ……」

 普段学食一緒に食べているくせに何を言ってるんだ、とペンギンは心の中でツッコンだ。

 その後も、グチグチと文句を言い続けるロー。
 ペンギンはいっそ殴って気絶でもさせてしまいたいと考えたが、サークルの先輩であるローにそれをする勇気はなかった。

「クリスマスはどうしたって恋人優先になりますって。おれらみたく独り身なら別ですけど」
「くそっ……」

「先輩、クリスマス寂しいなら、おれ達が一緒に遊びますよ!」

 いつの間にか教室に来ていたキャスケットが、カバンを机に置きながら言った。

「おれも数に入ってんのか」

 勝手に数に入れられたペンギンが不満をもらすも時すでに遅し。
 ローはすでにその気になったようだった。

「そうか、二人とも、大好きなおれと出掛けたいか……!」

 何やら気持ち悪い事を言いながら、ローが二人の方を見た。

「はい!」
「そりゃ先輩の事は好きですけど……男三人でどこ行くんですか。周りカップルばっかの場所とか嫌ですよ、おれ」

 ペンギンの言葉に、キャスケットが食い付いた。

「じゃあおれカラオケ行きたい!」
「密室に三人か、いいな」
「……おれはボーリングとかのが良いです」

 何とも言えない危機感にペンギンがそう提案すると、ローが言った。

「多数決でカラオケだ。な、キャス」
「もちろんです! 先輩!」

 ノリノリな二人。
 ペンギンは、先輩からの被害が全てキャスケットに行けばいいな、などと考えながら、痛む頭を押さえて呟いた。

「最悪だ……」



 一方その頃。

 キッドはキラーと一緒にお互いのプレゼントを選んでいた。

「どうせなら、普段使えるものがいいな」

 キラーの言葉に、キッドは頷きながら言った。

「……揃いで何か買わないか?」
「ん? 色違いの弁当箱とかか?」
「……クリスマスプレゼントに弁当箱って、どうなんだお前」

 呆れた様子で言ったキッドに、キラーが訊ねた。

「なら、お前は何にしたいんだ?」
「アクセサリーとかどうだ?」
「……お前の趣味に走らないならいいぞ」

 キッドに任せると、やたらと悪魔的な装飾品になることを、キラーは経験から知っていた。
 今までに、ドクロやら刺々しいデザインの物をキッドから渡された回数は、片手では足りない程度にはあった。

「とりあえず物を決めよう。普段使うと言うと、指輪とかどうだ?」

 普段自分が着けている物を思い返しながらキラーがそう言うと、キッドは即座に却下した。

「まだ早いだろうが!」
「……そういう事じゃないんだが。ソレがダメなら、携帯に付けるストラップとか」
「アクセサリーじゃねェが……良いんじゃねェか」

 元々、キラーはあまりアクセサリーを着ける方では無いため、買ったとしても着ける機会は限られていた。
 その点、携帯ストラップならカバンに付けるという手もある。

「ならそれで探そう」
「おう」
「……何か緊張するな。揃いの物を使うの、久しぶりだから……」

 キラーの言葉にキッドが記憶を辿ると、二人が揃いの物を使うのは、幼少期以来だということに気が付いた。

「そういやそうだな……それに、あの頃とは意味も違ェしな」
「……ああ」

 キラーはそう答えながら、少し頬を赤くした。
 それに気付いたキッドは、照れくさく感じながらも、幸せを噛みしめつつ、呟いた。

「……楽しみだ」




【後書き】
現代パロのキドキラは幼なじみです。
ちなみにキッドは昔からずっとキラー好きだったんだってさ。
女の子だと思ってたんだってさ。

ペンギンは頑張れ。
お前もキャスケットと同じく先輩ラブなはずだ。
大丈夫、ローは多分セクハラしないから。

あと、ローとキラーはあくまでも友人です。
ちょっと依存度高いだけで、友人です。

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