キドキラ


 おれとキラーがまだガキだった頃、おれはよくキラーの家に遊びに行った。
 それで、冬になるとキラーの家ではコタツを出していたから、二人で並んで入っていた。

 ただ、二人ともそれなりに成長してくるとだんだんと狭く感じるようになって、ある日こんな事を言った。

『そろそろならんで入るのキツくねぇか?』
『そうでもないと思うけど……』
『いやキツイって』

 おれがそう言うと、その時はよく理由がわからなかったが、キラーがうつむいて泣きだした。

『ゴメン……ヤだよね……せまいの』
『いやとかいってないだろ……てかお前は?』
『ヤじゃないけど……キッドがヤならがまんする……』

 キラーの言葉からおれは何となく、嫌がられてと勘違いして泣いてる、ってな結論に至った。

『……そうじゃなくてさ、おれたち、いつかならんで入れなくなんだろ』
『うん……』
『でも、お前はそれいやなんだよな?』
『……うん』
『だったらおれ、おこづかいためてお前といっしょに入れるくらいでかいコタツ買ってやるよ』

 おれがそう言うと、キラーはようやく顔を上げた。

『ほんとに?』
『おう! 約束するぜ!』

 と、それなりに本気でそんな約束をキラーとした。
 それ以降はとくに話題に上がる事も無かった。

 そんなおれ達も、今はルームシェアという名目で一緒に暮らしてる。
 こたつはまだ小さいヤツしかないが、約束した通りのサイズを置けるスペースはある。


 そして今、おれはその約束をようやく果たすべく、この為に貯金したおこづかい……もとい、バイトで貯めた金を持って家具売り場に来ている。
 本当はキラーと一緒に来たかったが、生憎バイトが入っているらしい。
 とはいえ、新しいのを買う事は言ってあるし問題ない。

 ただ一つ気になる事が有るとすれば、買う事を伝えた時のキラーの反応だけだった。



 夕方、バイトから帰って来たキラーは、こたつを見ると驚いた様子で言った。

「随分大きいの買ったんだな」
「約束通りのサイズ買ったからな」
「……なんか約束したか?」

 おれの言葉に対するキラーの返事に、おれは予感が当たっていた事を確信した。

「お前、やっぱり忘れてたのかよ」
「……あぁ、もしかして子供の頃のアレか?」
「それだ。並んで入れるコタツ買うって約束しただろ」
「すまない、忘れてた……でも、お前がそんな事覚えてるなんて意外だな」

 こいつはどうも一言多い。
 まあ今さらそれでイラつくほど短い付き合いじゃないから良いんだが。

「馬鹿にすんな、お前との約束くらい覚えてて当然だろ」

 おれがそう答えた後、何やらキラーは沈黙し始めた。

「……キラー、とりあえず突っ立ってねェで座れよ」

 沈黙のせいで恥ずかしくなってきたおれは、はぐらかすようにキラーの腕を掴んで自分の横に座らせた。
 案外抵抗なく座ったキラーの方を見ると、キラーは赤くなった顔を隠すように俯きながら言った。

「その……本当は凄く嬉しいんだ……ありがとう」
「そうかよ、それなら本望だ」

 おれがそう言いながらキラーを抱き寄せると、キラーもおれの胸にもたれ掛かってきた。

「温かいな」

 その言葉におれは、まだ冷たいキラーの身体に触れながら「そうだな」とだけ答えた。



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コウさんより1周年企画のリクエストです!

【こたつ】というシンプルなお題だったので、
小さい頃の約束を果たす男前なキッドさんを主体に書いてみました!
キドキラはラブラブが一番ですね、やっぱり。

次はダブルベッドあたりを買おうとするんだと思います、キッドさん。
約束はしてないけど。

それではコウさんリクエストありがとうございました!

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