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「あんパンの……ヒーローいるじゃないか」
「ああ、いるな」

 キラーが、突然子供向けアニメのヒーローについて話しだしたのは、昼休み、屋上で飯を食ってる時だった。

「あれって、顔を何割あげたら動けなくなるんだろうか」
「……」

 たしかに、かばのガキがもらうのは、だいたい十分の一くらい。
 全体を食ったことはたしか無い。

「……とりあえず、顔見て相手が認識できるレベルじゃねェか」
「……目鼻だけでも判別できる自信があるぞ」

 あの顔は、確かに特徴的だ。

「じゃあ中の餡が……半分無くなったらアウトとか、そんなだろ」
「なるほど……餡が重要なのか」
「じゃねェか」

 いや、そうじゃない事は知ってるが。たしかあいつ、食いもんならなんでも動くはずだ。

 ってかそんなことはどうでもいい。

 何で、せっかく、キラーと屋上で二人きりなのに、子供向けヒーローの心配しなきゃならないんだ。

 おれは、意を決して、行動を起こす事にした。

「キラー」
「ん?」
「もう少しこっち来い」

 キラーが素直に近づいてくる。

「で、キッド。な」

 キラーが、なんだ?、と訊いてくる前に、おれはキラーにキスをした。
 逃げられないようにキラーの後頭部を押さえて、開いた口に舌を挿れる。

「っん……、ふ……っ」

 しばらくして、唇を離すと、キラーは顔を赤くしながら、うつむいた。

「っ……ばか……!」
「……わりィ」

 とりあえず、殴ってこない以上、キラーはさほど怒っていないらしい、と判断して、おれはキラーを抱き寄せた。

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