008
最近ギクシャクしてきた事には気付いていた。
その原因が、キラーじゃなくて自分にあるってことも。
「最初はお前の視界に入るだけでよかったんだ」
相手の視界に自分が存在すること、ただソレだけが喜びだった。
「しばらくして、挨拶してくれただろ? あれはすごく嬉しかった」
一言だけでも、いや、会釈してもらえるだけでも、満足だった。
「話し掛けてもらえたときは、もう死んでも良いと思ってさ」
なんて返したらいいか分からないくらいで、もしかすると、あの時変なことを言ったのかも。
「でも、一度喜びを知るといけないな」
それを得る為に、自分を美化しようと必死になってしまう。
どうしたら振り向いてもらえるか考えてしまう。
余計な事をして、ギクシャクしてしまって、それで結局、何も出来なくなる。
「だから、逆に話す機会も減っただろ? だから……もうやめる」
「自分を偽らない。前みたいに……それでも良いか?」
おれの問いに、キラーは苦笑いしながら答えた。
「もちろんだ。だって、おれは元のお前が好きなんだから」
「……ありがとう」
それしか返せなかった。
でもこれでいいんだ。
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