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 最近ギクシャクしてきた事には気付いていた。
 その原因が、キラーじゃなくて自分にあるってことも。




「最初はお前の視界に入るだけでよかったんだ」

 相手の視界に自分が存在すること、ただソレだけが喜びだった。

「しばらくして、挨拶してくれただろ? あれはすごく嬉しかった」

 一言だけでも、いや、会釈してもらえるだけでも、満足だった。

「話し掛けてもらえたときは、もう死んでも良いと思ってさ」

 なんて返したらいいか分からないくらいで、もしかすると、あの時変なことを言ったのかも。

「でも、一度喜びを知るといけないな」

 それを得る為に、自分を美化しようと必死になってしまう。
 どうしたら振り向いてもらえるか考えてしまう。

 余計な事をして、ギクシャクしてしまって、それで結局、何も出来なくなる。

「だから、逆に話す機会も減っただろ? だから……もうやめる」

「自分を偽らない。前みたいに……それでも良いか?」

 おれの問いに、キラーは苦笑いしながら答えた。

「もちろんだ。だって、おれは元のお前が好きなんだから」
「……ありがとう」

 それしか返せなかった。
 でもこれでいいんだ。


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