キドキラ


《或る日の晩酌》



「覚えてるか? お前にそのマスク渡した日の事」

 キッドが、キラーの傍らに置かれたマスクを指差した。

「・・・・・・ああ、一応な」
「一応かよ? ……まあ良いぜ、気にしないでおいてやるよ」

 そう言って、キッドがグラスに口を付けて傾けた。
 普段の様に一気に飲み干すことはせず、時間をかけるのを楽しんでいるように少しずつ飲んでいた。
 そんなキッドの横顔を見ながら、キラーが言う。

「……あの時おれは、まだ完全に心を許したわけじゃ無かった」
「ああ、知ってた」
「ただ、あの時以来、少し信頼しても良いかと思い始めたんだ。たしか。……我ながら単純だけどな」

 キラーは、傍らにある自分のマスクに目を向け、それに触れながら、少し微笑んでそう言った。

「後悔はしていないから、いいんだけどな」
「そうか、そりゃア良かったぜ」

 そう言って、キッドは半分ほど酒が無くなったグラスを床に置いた。
 キラーが、手近に置いておいた酒瓶を手に取る。

「なぁ、キッド」
「あ?」
「おれはお前についていけて、幸せだ」

 キラーはキッドのグラスに酒を注ぎながら、しみじみとそう言った。
 キッドはキラーに礼を言った後、こう返した。

「おれもお前に出会えて良かったと思ってるぜ」
「そうか? そう言ってもらえて光栄だ」

 キッドの返答に、キラーは茶化す様な調子でそう返した。

「仲間として、親友として、あともう一つの意味としても、な」

 そう言って、キッドはキラーの肩に手をかけ抱き寄せた。
 そしてそのまま腕の中に収めるように抱きしめると、月を見上げてこう言った。

「しかし今日は月が綺麗だ、なあキラー?」
「……今の状態じゃ見えないが、お前が言うなら、そうに違いない」

 キラーは、酔いのせいで普段より体温の高いキッドの背中に腕を回しながらそう答えた。

 キッドは、視線を月から外し、キラーの髪に指を通しながら訊いた。

「これからも一緒に居てくれるか?」
「ああ、当然だ」

 そう答えたキラーと答えを聞いたキッドの顔は、どちらもとても幸せそうだった。



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コウ様への5000HIT企画作品です。

ほのぼの甘め、原作っぽい二人ということでした。

なにやら結婚ウン年目の夫婦による語りあいのようになってしまいましたが、満足頂けたでしょうか?

本当に長らくお待たせしました……!
喜んでいただければ幸いです。

良いなと思った方は是非→ 拍手

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