ペンキラ


 穏やかな日差しの下、猫と戯れる青年。
 通常なら、それなりに和む光景である。

 青年が億越えの賞金首で、奇妙なマスクをかぶってさえいなければ。

 その光景に物珍しさを感じたペンギンは、思わずキラーに声をかけた。

「なにやってるんだ、キラー」
「! ……なんだ、ペンギンか」
「なんだ、って酷いな……それにしても、よく判ったな」

 今日、ペンギンはいつも身につけている帽子を外していた。
 だから、つなぎは着ていたものの、キラーには誰か判るまいと思っていたのだ。

「声で判った」
「なるほど」
「キャスケットも似たような声だけど、お前とあいつの区別くらいはつく」

 キラーの言葉を聞いて、ペンギンは少し嬉しさを感じた。

「声で判ってもらえるとは思ってなかった」

 ペンギンがそう言うと、キラーは軽い口調でこう返した。

「キャスケットと髪形が違ったからな」
「ああそこか……そうだよな……」



 そんな会話の最中も、キラーは猫を撫で続けていた。
 だが、猫の方が飽きたらしく、どこかへ行ってしまった。

 キラーはしばしの間猫が立ち去った方向を見つめていた。
 そして、不意に立ち上がるとどこかへ向かって歩き始めた。

「帰るのか?」
「いや、他の猫を探しに行く」
「そうか……なぁ、ついて行ってもいいか?」

 ペンギンは買い出しの途中だったが、キラーの行動に少し興味があった。
 食料は十分に残っているから、今日中に買って帰れば間に合う。

「別にいいが、多分楽しくないぞ?」
「構わない」
「なら好きにするといい」

 そう言ってから、キラーは歩きだした。
 ペンギンがその横について行く。



 その道中、ペンギンは気になっていた事を訊いてみた。

「なあ、そのマスクは外さないのか?」
「外せないんだ。色々……あって」

 キラーは、少し困ったようにそう答えた。

「そうなのか……」

 聞いちゃまずかったか、とペンギンは罪悪感を感じた。
 その時、キラーが「あ」と声をあげた。

「あそこに居るみたいだ」
「? なにも見えないが……ああ」

 路地裏から少し伸びた影を見て、ペンギンも猫の存在を確認した。
 キラーがその路地に駆け寄る。



 ペンギンが路地に着くと、キラーはすでに猫を撫でていた。

 その猫の警戒心が薄いのか、動物に警戒されにくい性質なのか。
 ペンギンには判らなかったが、猫は逃げずにその場にとどまっていた。


「随分となついてるな」
「愛情が伝わってるんじゃないか? 多分」

 冗談めかした口調でキラーが言う。

「そういうもんか」
「そういうものだ」

 楽しそうな様子に、ペンギンも何となく和んだ。

 何度かそんな事を繰り返し、日が傾き空が赤く染まって来たころ。

「さてと、そろそろ帰るな」
「そうか。賞金稼ぎには気をつけろよ」
「勿論だ。じゃあ……またな」

 そう言って、キラーはペンギンに背を向けて歩きだした。

「またな……か」

 ペンギンはその言葉に少し嬉しさを感じながらそう呟いた。
 そして、キラーを見送ってからその場から離れ、買い出しに行くため店に向かった。




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=万里様への5000HIT企画作品です。

ペンキラでほのぼの/甘
というリクエストをいただいたので

動物と戯れるキラーとそれを見守るペンギン
という話を書いてみました。

気に入っていただければ幸いです。


=万里様のみお持ち帰り可です。


お待たせして申し訳ありませんでした。


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