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「キッド、賭けをしないか?」

 キラーがそう提案したのは、空は爽やかに晴れわたり、暖かな日差しが降り注ぐ、そんな甲板の上で日に当たっている時だった。

「何について賭けんだよ?」
「天候だ。荒れるか、荒れないか」

 ここは、グランドラインの海の上。
 穏やかな天候が突如荒れることも珍しくはない。

「構わねェが……お前は何か当てがあんのか?」
「いいや。ただの運試しだ」
「そうかよ。ならおれは、荒れない方に賭けるぜ。制限は一時間でな」

 キッドはそう言って、キラーの前に数枚のコインを置いた。

「なら、おれはその逆に。賭けるのは、おれ自身にしておく」
「そりゃつまり、おれが勝ったら、命令聞くってことだな?」

 キッドが期待に満ちた目でキラーを見ながら言うと、キラーは愉しそうに答えた。

「ああ。なんでも」
「なら、真剣に快晴を祈ることにするぜ」

 そう言ってから、キッドはキラーのそばに近寄り、続けて言った。

「明日の朝まで晴れてりゃ最高だ」
「……ちがいない」




(勝てば臨時収入)
(負けてもそれはそれで、幸せらしいな)

都合の良い勝負を持ちかけてきたもんだ、とキッドは思った。

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