ペンキラ


 わざわざ船まで来たくせに、キラーは昼寝と称して、もう一時間以上おれの膝を枕にして寝ていた。
 胡坐をかいているから、膝枕ほど硬くはないだろうが、どのみち寝心地は悪そうだ。

 いい加減本を読むのにも飽きたおれは、キラーの背中を髪越しに撫でて声をかけた。
 それに気付いたキラーは目を覚まし、そのままおれに抱きついてきた。
 おそらくもっと撫でて欲しいんだろう、と解釈して、日に当たってすっかり温まった髪を撫でた。

「……大型犬でも撫でてるみたいだ」

 おれの言葉に、キラーは、撫でたことがあるのか、と訊いてきた。

「おれが十三の時に死んでしまったけど、犬を飼ってたんだ」
「どんなやつだった?」

「……おれによく懐いていて、座っているとよく肩に顔を乗せて甘えてきた」
「こんな風か?」

 そう言いながら、キラーは起き上がっておれの肩に顎を乗せてきた。

「ああ、それで撫でてやると、嬉しそうに尻尾を振っていた」

 言いながら、キラーの髪を撫でる。

「……尻尾は振れないが、懐く気持ちはわかるな……」
「そうか?」
「ああ、もっと撫でてほしくなる」

 そう言って、キラーが抱きつくように、おれの背中に腕を回してきた。

「……飼われてみるか?」

 撫でながら、半分冗談半分本気でそう訊くと、キラーは一瞬悩んでからこう答えた。

「すまない……それは無理だ」
「……だよな」

 なら、いまのうちに、心置きなく撫でておこう。
 多分、明日にはおれもこいつもこの島をでて、しばらく会えなくなるだろうから。

 キラーも同じことを考えていたらしく、その日はなかなか帰ろうとしなかった。




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雪ちゃんへの相互記念作品です。

甘い感じのペンキラ、とのことで書かせて頂きましたが、ご期待に添えているでしょうか?

キラーは、なついた相手には犬のようだといいな、と思います。


雪ちゃんのみお持ち帰り可です。

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