004
出来れば、無傷で手に入れたいと思うのは、おそらく、ごく自然なことだ。
もちろん、いざとなったら、死なない程度に、最低でも、動けない程度には傷をつけるけど。
「キラー屋」
念のため、少し離れた場所から声をかけると、キラー屋は驚いたように振り向いた。
「ユースタス屋は、どうした?」
おれがそう訊くと、キラー屋はうつむいて、小さく肩を震わせた。
まるで、なにか嫌な事を思い出したかのような姿に、おれは、ユースタス屋を殺したのは、キラー屋だ、と考えた。
「なるほど……。……恨んでるかもな……最期の最期で裏切られて」
わかってる。
もしキラー屋が犯人でも、多分、ユースタス屋はキラー屋を恨んじゃいない。
それでも、冷静さを失ったキラー屋には、それがわからなかったらしく、膝をついて泣き出した。 おれは、そんなキラー屋をなだめるように、声をかける。
「……まあ、おれはそんな事ないと思うけど。ユースタス屋は良い奴だったから」
このまま、泣き止むまでなだめれば、キラー屋なら心を許すはずだ。
「きっと……キラー屋が後悔してるのもわかってくれる」
「……本当にか……?」
キラー屋が、赤くなった目でおれを見る。
「ああ、あいつなら絶対」
おれは、出来る限り優しく、そう答えた。
それを聞いたキラー屋は、ありがとう、と言って少し笑った。
こんなに上手くいくなんて、思ってもいなかった。
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