004


「トカゲの血が必要なんだ……」

 そう言ってホーキンスに詰め寄られたドレークは、嫌な予感しかしなかった。

「言っておくが、おれはトカゲでは……」
「……違う……トカゲを探して欲しい」
「……それだけか?」
「勿論、種類は決まっているが……」

 あまりにも普通な……ホーキンスにしては普通な内容だったため、ドレークは正直拍子抜けしてしまった。

「どんな見た目をしているか教えてくれるか?」
「ああ……これを参考にしろ」

 そう言ってホーキンスは写真を手渡した。

「このトカゲなら、見たことがある」
「そうか……なら都合がいい」

 そう言って、ホーキンスは自分の船の方へ歩き出した。

「?」
「……あまり船から離れると、運気が落ちる……船員もだ。……だから頼んだ」

 簡潔すぎる理由を述べて、ホーキンスはいつもより早足で離れて行ってしまった。

「……仕方ない、探すか」



「……緊張した」

 船から離れて行くドレークの後ろ姿を眺めながら、ホーキンスがそう呟くと、新入り船員の一人が、えっ?、と声を上げた。
 それを、近くにいた古株が嗜める。

「馬鹿、お前わからなかったのか? あんなに緊張してたのに」
「全くもって……」


「ドレーク……来てくれるだろうか……」


「ほら、どうみても恋してるだろ?」
「まぁ……セリフの内容だけなら」

 困惑する新入り。

 無理もない。
 ホーキンスはいつも通り無表情だし、語調が弾んでいるワケでもないのだから。



 その一時間半後、トカゲを五匹も生け捕りにして持ってきたドレークは、船員により丁重にもてなされたが、それはまた別の話。



【後書き】

一時間半もトカゲを探すって、ドレークさん、よっぽど暇だったんですね。
とりあえず、ホーキンスの感情が常にわかるようになったら古株認定に違いない。

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