006


 最初は、こっそり、床に落ちた一本の髪をひろうだけで満足していた。

 それを続けて、だいぶ経ったとき、集まった髪を使って腕飾りを作った。
 もちろん、見つからないように、しまっておいたけど。


 しばらく経つと、おれは髪だけでは満足できなくなっていた。

 だから、爪を、善意のふりをして、切ってあげて、それをこっそり集めた。

 そして、集めるだけではものたりなくなったある日、おれは爪を食べた。

 その爪は、自分のそれよりも美味しく感じられた。


 ある時、おれはこっそり、細かく切った自分の髪を、あいつの食事に混ぜてみた。

 目立つ色ではなかった為か、あいつは気が付かず、それを完食した。

 それで、自分もあいつの髪を食べようと思いついた。


 次の日、おれは腕飾りにしていない分の髪を自分の食事に混ぜた。

 やっぱり、あいつの髪を混ぜた食事は、いつもより美味しく感じた。




 それで、おれは考えたんだ。

 あいつ自身を食べたら、きっと、とても美味いんだろうな、と。

 だから、昨日、街に居たときに、あいつに薬を打って、意識がないうちに、左の小指を切り取った。

 もちろん、新品の、きれいな刃物を使った。

 そして、偶然発見したのを装って、船まで連れて帰った。

 誰もおれを疑わなかった中、唯一疑ったのが船長らしくて、ずっとおれを睨み付けていた。

 案の定、夜中におれを呼び出して、あった事を全部話せ、と言ってきた。


 もちろん、おれはシラをきりとおした。


 そして、今日の朝、おれに向かって船長は、お前を船から追放する、と言った。


 だから、おれは、あいつを連れ去って、食べることにした。


 ただ、食べる前に、一回はあいつと交わりたかったから、おれはあいつを犯そうとした。


 必死で逃れようとするあいつを、おれは出し得るかぎりの力で押さえつけた。

 そして、いざ、という時、後頭部を誰かに殴られた。

 あいつが発した言葉で、おれは、それが誰かを知った。

「っ……キッド……!」

 船長は、意識を失う寸前のおれを押し退けて、あいつを連れて帰ってしまった。




 おれはといえば、頭を強く殴られたせいなのか身体が動かなくなった。

 多分、誰にも見つけられず、餓死するんだろう。


 ああ、せめて、昨日の夜に、あいつの小指を食べておけばよかったな。

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