002


 最初に会ったとき、軽やかな戦い方に見惚れていた。

 なのに、それを邪魔されて、少し苛立ちを覚えた。


 次に会ったのは、オークション会場。

 一言だけ聴いた声は、思っていたより低かったが、がっかりするような事はなく、むしろ耳に心地よかった。

 ただ、その時は、周りに邪魔な奴らがいたから、声はかけられなかったけど。



 やっと二人きりで会話ができたのは、騒ぎがおさまり、海軍の奴らが引き上げた、その翌日だった。


 その日、偶然街中で出会えたのは、まさに幸運。
 しかも、近くの酒場に誘ったら、承諾してもらえるなんて、今日はかなり運がいい。


「キラー屋は、飲まないのか?」

 マスクを着けたままじゃ、飲むのは無理だろう、と思ってそう訊いた。

「いや、飲む」

 おれの予想に反して、キッパリとそう言うと、キラー屋はマスクを外して、卓上に置いた。

「船の仲間、特にキッドには秘密にしてくれ……外れなくなったと言ってあるから」
「何でだ」
「……おれはあまり酒を飲めないのに、無理に飲ませようとするんだ」

 だから、マスクを被ってるんだ、とキラー屋は言った。

 ただ、理由はそれだけじゃないな、とおれは思った。

 キラー屋の顔には、大きな傷があった。
 そんなに古い傷ではないところを見ると、航海の途中で付いたのだと思う。

「なるほど……なら言わないでおく」

 なぜ傷が付いたかを訊くのは、野暮だ。
 言わないなら、訊かれたくないのだろうから。

「ありがとう」

 そう言って微笑んだキラー屋の、思っていたよりも無邪気な表情に、おれは再度心を奪われた。

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