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寄り添う
今私たちが生きている世界は、希望の無い世界。光の指さない闇の世界。日刊預言者新聞で誰かの訃報が載っていることは、最早日常茶飯事なのだ。

覚悟はしていたはずだった。けれど、だからと言って、本当にその時が来たときに、泣かないわけでも、悲しくないわけでもない。

ホグワーツの休暇明けの最初の朝。ばさばさという羽音共に大広間に飛び込んでくる梟達。日刊預言者新聞を運んできた梟に小銭を渡し、新聞に目を通す。新聞の片隅に載っている、小さな記事。死喰い人に、純血一家であったウィーズリー家が襲撃され、生き残りは、ゼロ。

「嘘でしょ…チャーリーっ」

感情がコントロールできなくなる。あっという間に目頭が熱くなり、新聞の活字が滲む。頬を伝って落ちた涙がぽたぽたと黒い染みを作る。
だって帰ってくるって言ったじゃない。また休み明けにって約束したじゃない。それなのに、どうして?

あっという間に日が過ぎ、私はウィーズリー家の葬式に参列していた。墓の前で人々が順に聖水を撒いていく。ついに私の番という時に、私を呼ぶ声が聞こえた。

ああ、チャーリーの優しい声。
貴方に会いたいわ。貴方無しでは、私は生きていけない。



「――ッ、トリシャッ!」

目を開ければ、泣きそうな顔をしたチャーリーがいた。チャーリーはローブを着て、グリフィンドールのネクタイをしている。薬品の匂い、白いベッドにカーテン。ここは、…ホグワーツ?

「もう君が目覚めないかと思った…頼むから、心配をかけないでくれッ」
「チャーリーッねえ、生きてる?生きてるわよね?!」

縋るように彼に抱きつく。ゴーストじゃない、暖かい。鼓動が聞こえる。ちゃんと、生きてる。

「良かった…ッ」
「それはこっちの台詞だ、トリシャ。急に倒れたって聞いて、ここに来てみれば…、君は、死んだように眠っていて、目を覚まそうとしない」
「だって、貴方が…し、しんでしまうって、」

そんなことか、と彼は笑った。

「そんなことって…貴方がいなくなったら私は、生きていけないわ。両親ももういないのに、貴方までいなくなったら…」

大丈夫、ここにいる、とチャーリーは私を抱きしめてくれた。

「俺はここに居るよ」
「いなく、ならない?死なない?ずっと、私の傍に居てくれる?」
「どこにもいかないし、死なないし、ずっと傍に居るから」

彼のごつごつした大きな手で私の顔を包み、眉を下げて笑った。こつんと額と額をくっつける。

「トリシャが望まない限り、いなくならないから。ずっと一緒に居るよ」




寄り添う

(俺だって、君がいなければ生きていけないから)


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