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近づく
近づく やっと、彼に近づけた。アンブリッジ先生、ありがとう

「あ」

「あ」


腕に当たり、羽ペンが落下した。音を立てることなく床に落ちて、2、3回床を転がって止まった。羽ペン落ちちゃった、拾わなきゃ。と思って伸ばした手が隣の彼の手と当たった。


「あっ…」

「ごめん。これ、君のだよね」

「あ、うん。ありがとう」

「いいよ、気にしないで」


にっこりと笑ったハリー君にうっとりとしていると、頭に痛みが走った。思わず痛かった場所を片手で抑えながら見上げると、ハリー君と同じようににっこりと笑いながらも青筋を立てたアンブリッジ先生。彼女は例えるならば鬼だ。


「なあにをしてるのかしら、Ms. #ミョウジ#」

「あら、べつに?先生とは違って若いから、学生をとして青春を満喫してるだけですけどー?」

「Ms. #ミョウジ#!」

「ふふふ、図星でした?ごめんあそばせ!」

「グリフィンドール10点減点!それと、」


教団に戻りながら振り返ったアンブリッジ先生は満面の笑みを貼り付け、猫なで声で付け足すように言った。


「Ms. #ミョウジ#。今晩、8時にわたくしの部屋まで来るように、いいわね?」


うっわー、面倒。そう思いながらこれ以上面倒になると本当に嫌なので、はいはいと二つ返事で頷く。アンブリッジ先生の笑顔にピキッと亀裂が入ったような気がした。


8時前にグリフィンドールの談話室から出ようとして、誰かに腕を掴まれた。振り返れば、心配そうに眉を寄せたハリー。


「大丈夫?……えっと、」

「トリシャでいいよ!私もハリーって呼んでいい?」

「もちろん!」

「大丈夫よ、あんなガマガエル」

「ならいいんだけどね。でもトリシャのおかげですっきりした。あんまりがまがえるに嫌味いう人いないしさ」

「まかしといて!」


なんだかおかしくて二人で噴出した。やっぱり、ハリーは近くでもかっこいい。というよりも見れば見るほどかっこいいなあ、もう。





「僕前にあいつにつかまったことがあって…」

「ああ、最初の授業の時?!憶えてるよっ」

「もし変なペンで変なことをかかされたら、僕のところに来てくれる?」

「え?」

「良い薬、持ってるから」


いや、むしろ今の君の笑顔の方がいい薬だよ、ハリー。
なんだけど!なにこの輝かんばかりの素敵な笑顔…!


「わ、もうこんな時間……行ってくるね!」

「じゃあ、僕待ってるよ」

「……いいの?」

「うん。だから気をつけてね、トリシャ」


ちゅ、というリップ音と共に行ってらっしゃいと囁いたハリーにファーストキスを奪われました。…ハハハリィイー?!
今なにが!


「……」

「行かなくていいの?」

「いいいってくるね?!」

半分叩きつけるように談話室のドアを閉めて、後ろも振り替えずアンブリッジの部屋まで猛ダッシュする。
なに、なにが起こったの今っ。あーっもう本当に!こんなにお近づきになれたなんて!

ハリーと話せる機会を作ってくれるなんて、ちょっとアンブリッジに感謝、かも。


近づく
(ハリィィー!ハリィィー!)
(Ms. #ミョウジ#?)
(お待たせしました!ごきげんようアンブリッジ先生!)
(なにこの子…)
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