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傷つく

チャーリー・ウィーズリー。彼を一番よく表している言葉は「クイディッチ」、「ドラゴン」、「赤毛」、「そばかす」……そして「やさしさ」だ。
彼は本当に優しい。優しすぎて、つい、期待してしまうほどに。
チャーリーとの関係は所謂先輩、後輩というものだ。私が彼より一つ上で、今年の夏、ホグワーツを卒業しなければならない。同じ学年だったら授業中ももっと一緒にいることが出来たのに!

本当はいつまでもこのあいまいで気持ちのいい関係に、距離で居たかった。だってチャーリーは優しいから。まゆで恋人にでもなれたような錯覚をしてしまう。彼は人と接することに関して少し不器用だけど、それが気にならないくらい優しい。でも、けじめはつけなきゃいけない、いつかは変化する時が来るのだから。そう、自分でもわかっていたはずなのに。

決まって同じ時間に朝食を摂るチャーリーはあともう少ししたら大広間に来る。私に声をかけてくれて、それから友人のところに行くか、友人が見当たらなければ私の隣に座る。ほら、こっちに来た。私に向かって歩いてくる。小さく手を振れば、チャーリーははにかんでそのまま私の隣に座った。ああ、幸せ。


「おはよう、トリシャ」

「うん、おはようチャーリー。ねえ、今日の午後って空いてる?」

「……どうだったかなあ」


少し考えるような素振りを見せ、それからチャーリーは空いてるよ、と答えた。


「じゃあお昼食べたら暴れ柳の見える、いつもの大きな木のところに来てくれる?」

「いいけど…、なんで?」

「話したいこと、あって」

「……わかった」


チャーリーはまだ何か言いたそうではあったけれど、私の真剣な表情を見て、何も言わなかった。本当は今すぐチャーリーに告白してもよかったけれど、やっぱりもう少しだけ、一緒にいたい。そして期待していたい。たとえそれが意味の無い行為だったとしても。





こういう時に限って時間とは早く流れるもので、気づけばもう昼休みが始まろうとしていた。慌てて大広間に駆け込む。ちょうどチャーリーが出てくるところだった。思わずあ、と言ってしまい慌てて口を閉じる。当然私に気づいたチャーリーはどうぞ、といって道を開けてくれた。いつもこんな時間にチャーリーはお昼を食べないのに。


「今日は早いんだね」

「うん?ああ、まあ。ちょっと用が出来て。どうしてもずらせないみたいだから、トリシャとの約束の時間になる前に片付けようと思ってさ」

「そうなんだ」

「トリシャ、急がなくていいからちゃんと昼飯食べてくるんだよ?俺待ってるから」

「うん!」


その後の食事は何を食べたのかよくわからない。いよいよ緊張してきて、それどころではなくなってきたから。食べ終わって、急いで約束した場所に向かう。遠目に待ち合わせ場所が見えてきたとき、心臓が止まったように感じた。
チャーリーは一人の女の子と一緒にいた。どこか恥ずかしげに笑いあう二人。ちゃーりに少女が抱きついたかと思うと、彼は抱きしめ返した。いやだ、こんなの。そして少女は城に向かって歩いて行った。


「チャーリー……」

「トリシャ…。ごめん、俺もう一緒に飯食えない」

「彼女、居たんだね」


そう言えば、彼は少し恥ずかしそうに笑った。そして、「今さっきできたんだ」と言う。
もうチャーリーを直視できなかった。彼の眼を見たら泣きそうで。
どうして、と喉元まで上がってきた言葉を飲み込んだ。心が叫んでいる。張り裂けそう。やめて、もう何も言わないで。聞きたくないよ。


「俺みたいなやつのこと、好きって言ってくれて…」


ねえ、それって私でもよかったってことでしょう?私が先に想いを伝えていれば、振り向いてくれた。そういうこと?……それって、ないんじゃない。


「ねえ、私……好きだったよ」

チャーリーは驚いたような顔をした。悲しそうに笑う。ちがう、ちがう、この好きって言葉は、あなたにそんな顔をさせるためにずっと大切にしていた言葉じゃない。せめて笑ってよ、ねえ。


「ごめんな、俺は…つきあえあい。でもずっと友達でいてくれないか?俺は、トリシャのこと、友達としてすごく好きなんだ」


そんなこと言わないで。そんな残酷な優しさなら、私はいらない。酷くふってよ、諦められるくらい。あなたを忘れる決心がつくくらい。

傷つけて
傷つけて
傷つけて、
私があなたを嫌いになれるくらい
そうでないと、わたし



傷つく
(ねえ、おねがいだから、)


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