BOOK | ナノ

まったくどうしようか。放っておいても付きまとわれるし、飽きるのなんて今更期待できないし。私が彼の期待に応えるのが一番いい?馬鹿言えそんな趣味あったらもっと早くハッピーエンド迎えてるっつーの。
「はぁ……」
私が携帯をいじりながら大きなため息を付くとなぜかそこにいた柳が言った。
「どうした。気分がすぐれないなら人間椅子でもしてやろうか」
お前のせいだっつーの。
「……人間椅子って?」
「つまりな……」
柳はちょっと考えて教室の床に四つんばいになった。
ここは昼休みで人のたくさんいる教室なのだ。そんな衝撃映像は勘弁してほしい。周りがざわざわしている。

ピロリーン

私はとりあえず衝撃的な画をカメラに収め、その場を去った。こいつのせいで最近は私まで変態呼ばわりだ。まったくもう。


残された柳はまたも恍惚とした余韻に浸っていた。
それを呆然としていると勘違いしたクラスの1人が慰めようと話し掛ける。
「あー、柳?大丈夫か?加藤もちょっと酷いよな」
「……加藤イズミは的確に俺のツボをついてくる。彼女自身がそれを楽しんでいないとは思えない」
「あ、うん……ごめん」



今日は学校帰りに1人で雑貨屋さんを回って衝動買いをしまくって最近奴のせいで溜まりまくっているストレスを発散しようとしたのにその張本人が付いてきてしまいました。

「お前にはこの色がいいだろう」
「……はぁ」

荷物を持ってくれるのはいいが正直ストレス発散もなにもあったもんじゃない。でもちょくちょく奢ってくれるのは嬉しい。

「それとな、これとこれならどっちがいい?」
彼が持っていたのは妙に高いピンヒールの靴だった。赤と紫の二色。
「や、私こんなの履かないけど」
「これを履いて俺を踏んでくれ」
「やだ」

こんな顔でよくこんなことが言える。あぁもったいない。世の顔面に恵まれなかった方々に全力で謝罪してほしい。


「そんで、そのカーディガンも買ってもらったの?」
「あぁ、うんそう」
「ふーん……」
「ほんとにもうやめてほしいわぁ」
「ねぇ、イズミ、柳くんのこと好きなんじゃないの?」
「はーぁ?んなわけないじゃん」
「うーん、まぁそうだよねー。なんかやってることは恋人同士みたいだからさ。一緒に登校して時々下校もして、デート行って」
「私は本来それ全部1人でやりたいの。なんか付いて来ちゃうだけで」
「……だよねぇ」

好きなんじゃないの、なんて言われたとき、正直心臓が跳ねた。好きなわけないのに。いや、まさか。私に人を虐めて楽しむ趣味はないし。あんな変態、好きになるわけない。


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