09


「生きる意味がねぇなら、俺のために生きてみろよ」

「え?」

「俺を頼ってくれるなら、雪乃をドロドロに甘やかしてやるから」

「……」

「独りは寂しいだろ?俺だって雪乃と同じ」

「……同じ?」

「あぁ、俺とお前は似てるんだよ」



タマさんのために生きる、

それは依存して生きるっていうこと?……そんなの駄目だよ。



「いつかタマさんが壊れちゃいます。私が貴方に依存したら、絶対面倒に思うもの」

「いいじゃねぇか。雪乃は俺に依存してくれんだ?」



依存されることがそんなに嬉しいのか、タマさんは幸せそうに目を細めてそう言った。


……もしかしたらタマさんも、悲しいことがあって壊れてしまった人なのかもしれない。




タマさんの優しい黒い瞳には、何も写っていない。
――目の前にいる私でさえも。






「来いよ」




タマさんの瞳に写らなくたって構わない。

私は、私に優しくしてくれる人が欲しいだけだから。




タマさんは私の安定剤になる。




「はい」




“幸せ”の定義なんて知りえない。

だけど私にはこれが幸せ、なんだと思える。



それが例え歪な“幸せ”だとしても。




「タマさん、……抱き締めてください」




温かさに包まれながら、私はタマさんを一生離したくないと思った。




路地裏家出少女と猫
( 別に拾ってあげてもいーけど )




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