「生きる意味がねぇなら、俺のために生きてみろよ」
「え?」
「俺を頼ってくれるなら、雪乃をドロドロに甘やかしてやるから」
「……」
「独りは寂しいだろ?俺だって雪乃と同じ」
「……同じ?」
「あぁ、俺とお前は似てるんだよ」
タマさんのために生きる、
それは依存して生きるっていうこと?……そんなの駄目だよ。
「いつかタマさんが壊れちゃいます。私が貴方に依存したら、絶対面倒に思うもの」
「いいじゃねぇか。雪乃は俺に依存してくれんだ?」
依存されることがそんなに嬉しいのか、タマさんは幸せそうに目を細めてそう言った。
……もしかしたらタマさんも、悲しいことがあって壊れてしまった人なのかもしれない。
タマさんの優しい黒い瞳には、何も写っていない。
――目の前にいる私でさえも。
「来いよ」
タマさんの瞳に写らなくたって構わない。
私は、私に優しくしてくれる人が欲しいだけだから。
タマさんは私の安定剤になる。
「はい」
“幸せ”の定義なんて知りえない。
だけど私にはこれが幸せ、なんだと思える。
それが例え歪な“幸せ”だとしても。
「タマさん、……抱き締めてください」
温かさに包まれながら、私はタマさんを一生離したくないと思った。
路地裏家出少女と猫( 別に拾ってあげてもいーけど )
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