ピンクッションの失敗 廊下を通っていると、ふと、ナマエさんがこっそりと家を抜け出そうとしていた。 「ナマエさん・・・どちらへ、行かれるんですか?」 「ああぁぁぁ、き、菊!!!ちょ、ちょっとな。かくかくしかじかでな、ちょっと1、2時間家を抜けるが、か、構わないな!!」 「・・・はぁ、構いませんが。」 私がそう答えると、彼女は顔を真っ赤にしながら、空を飛んでいきました。(神様って便利ですよね。) 「・・・ナマエさん、かくかくしかじかじゃ解りませんよ・・・。」 俺の家のドアを控えめにコンコンとノックする音が聞こえた。こうノックをするのを俺は一人しか知らない。 「菊さんが連絡を寄越さないで来るなんて、珍しいですねぃ。・・・って、ナマエさん!?」 だが、扉を開けてそう言ってみれば、想像していた人物ではなく、いつも彼の隣にいる彼女で。 「・・・すまないな、菊は少々用事があるようで、此処には来れなかった。」 彼女は荒立っていた息を整えながら、そう俺に言う。 「いや、構わねぇんですけど・・・・・・どうかしたんですかぃ?」 「!!・・・あー。その、何だ。」 ナマエさんがそうやるのを見て、、少ししか開いてなかったドアを大きく開ける。 「ナマエさん、立ち話も何ですし。中、入りやせんか?」 「いや、真に申し訳ない。・・・用事はすぐ終わるんだ・・・すぐ終わるんだが・・・。」 いつものナマエさんらしくなくて、少し不安になりながらも、彼女の次の言葉に耳を傾ける。 「こういうのは、如何せん菊以外には初めてやるものだからな・・・。」 「?・・・はぁ。」 「サディク、花は好きか!?」 いきなり厳しい声でそんなことを言われ、俺は咄嗟にはい!と答える。まぁ実際に、花は嫌いじゃない。むしろ、好きな部類に入るから良いんだが。そして、急に視界が赤くなる。 「菊からの伝言だ。・・・お誕生日おめでとう。これからも宜しくお願いします、いつも本当にありがとう。・・・とのことだ。」 そう言って、俺の手を掴んでその赤い物を握らせる。 「それしか思いつかなかった・・・じゃなくて、菊がそれしか思いつかなくてすいません、だと。」 「・・・?」 よくよくそれを見てみると、真っ赤なチューリップとピンクッションが入っている花束で。 「確かに渡したからな!「ナマエさん。」・・・なんだ。」 眉間に皺を寄せながらこっちを見るナマエさんに向かって、俺は口を開いた。 「菊さんに、『ありがとうございます』って、伝えてくれやせんかねぇ。」 「!!・・・・・・わかった、伝えておく。」 そう言って、彼女はこっちを見て静かに笑った後、空を飛んでいった。見送った後、俺はふと疑問に思った。 「・・・ナマエさん、もしかしてあのこと知らないんですかねぃ?」 成功の前の大失敗 「ばれなかった・・・様な気がする。」 私はそう呟いて帰ってくると、菊が大きな鞄の中に色んな物を詰めている。 「?・・・ただいま菊。近々どこかに行くのか?」 「ええ。」 そう言ったところまでは良かった。・・・私にとってはその後の言葉が問題だった。 「トルコさんの誕生日パーティがあるものですから。」 勿論、ナマエさんもいつものように付いていくんですよ?と、死刑宣告まがいのものまで、セットにして言ってくれる菊。 (・・・そんなことは聞いていないぞ・・・菊!!!) (あ・・・い、言ってなかったでしょうか?) back ・ top |